アメリカがベネズエラ制裁緩和へ 原油輸入再開でのインフレ緩和と野党との対話促進狙うが、米国内には反発根強く

2022年5月19日 20時40分
ベネズエラの野党指導者グアイド氏(AP
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ベネズエラの野党指導者グアイド氏(AP )

 【ニューヨーク=杉藤貴浩】ウクライナに侵攻したロシアからの原油輸入を禁止した米国が南米ベネズエラへの経済制裁を緩和し、米石油大手とベネズエラ側との交渉を認める方針を決めた。豊富な原油資源を持つ同国からの代替輸入で米国内のインフレ抑制につなげ、ベネズエラの反米左派マドゥロ政権に野党との対話を促す一石二鳥を狙うが、米国内の反対は根強い。

◆米石油企業がマドゥロ政権と協議開始することを認める

 米政府高官は17日、ベネズエラに残る米石油企業シェブロンがマドゥロ政権と「将来の活動」について協議を開始することを認めた。複数の米メディアは同日、バイデン政権がマドゥロ大統領の親戚で国営ベネズエラ石油(PDVSA)の元幹部への制裁を解除すると報じた。
 一連の措置は米国が禁じるベネズエラからの原油輸入再開に直結するものではないが、17日のニューヨーク原油先物市場は将来の再開への観測が広がり5営業日ぶりに下落。ベネズエラのロドリゲス副大統領は「米国の決定が違法な制裁の全面解除につながるのを期待する」と表明した。
 米国では新型コロナウイルス禍からの回復に伴う供給不足やロシアへの制裁を背景とした燃料費高騰などで、3、4月の消費者物価指数の上昇率がいずれも前年比8%を超える歴史的なインフレが進行中。バイデン政権は3月、マドゥロ政権とエネルギー問題について協議していた。

◆「権威主義体制への譲歩」共和党は批判

 一方、ロイター通信によると、マドゥロ政権は制裁の一部緩和を受け、米欧が支持する野党との間で中断していた対話を近く再開すると決めた。ベネズエラはマドゥロ政権の社会主義路線の行き詰まりと米国の制裁などにより経済が破綻し、約600万人が国外に流出。米国がベネズエラの暫定大統領と認める野党指導者グアイド氏は17日、「悲劇を解決する合意が急務だ」と表明し、公正な選挙実施などを訴えた。
 だが、米国内では反体制派への弾圧を繰り返すマドゥロ政権への歩み寄りに野党共和党が反発。与党民主党のメネンデス上院外交委員長も「イランやキューバ、北朝鮮など、歴史は一方的な譲歩による交渉が権威主義的体制に実際の変化をもたらさないことを示している」と批判するなど、制裁緩和の拡大は先行きが見通せない状況だ。

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