<社説>新電力の苦境 再エネ主流への分岐点

2022年5月20日 07時43分
 電力小売りの全面自由化に伴って新規参入した「新電力」の経営が悪化し、撤退が相次いでいる。新電力の苦境によって露呈したのは、天然ガスなど輸入の化石燃料に依存する電力市場の危うさだ。
 二〇一六年四月の全面自由化で、大手十電力による地域独占の壁が崩壊し、これまでに七百五十を超える事業者が新たに参入。割安な料金を売り物に自治体など大口需要者にも浸透し、全販売電力量の約二割にシェアを伸ばした。
 しかし、帝国データバンクによると、二一年度の倒産件数は過去最多の十四件。これとは別に十七社が廃業や事業撤退を余儀なくされた。業務を縮小する事業者も少なくないという。
 原因は、天然ガスや石油など発電に要する化石燃料価格の想定外の高騰だ。新電力の多くは、自前の発電所を持たず、大手電力会社が日本卸電力取引所(JEPX)の市場に卸す余剰電力を仕入れて、契約先に送り出している。
 コロナ禍で停滞していた経済活動の再開を受け、昨年の秋ごろから始まった燃料価格の急騰に、ロシアのウクライナ侵攻が拍車をかけた。その影響で、JEPXの電力相場はこの春、前年同期の四倍にまで跳ね上がるなど、新電力は仕入れ価格が販売価格を上回る「逆ざや」状態に耐えかねている。
 新電力から値上げを求められ、大手への切り替えを希望する自治体や法人が増えているものの、燃料不足の折から、大手としても容易に供給量を増やせない。
 その一方で、日照量が増える春から夏にかけ、大手電力会社が太陽光発電事業者の送電を制限する「出力抑制」の要請が常態化、四月以降、発電された電気が送れず、むだになるという事態も相次いでいる。地域をまたぐ送電網の整備が遅れているからだ。
 風力や太陽光は燃料費不要の純国産エネルギー。国際情勢による価格高騰や供給不安は起きにくい。天候の影響を受けやすいという指摘はあるが、送電網を増強し、地域間の電力融通を容易にすれば、解消可能な課題である。
 ロシアによる原発攻撃は、原発を抱えるリスクを、あらためて浮き彫りにした。脱炭素のみならず、エネルギー安全保障の観点からも、再エネの増強は不可欠だ。
 化石燃料高騰のピンチを再エネ電力の地域分散、主流化への分岐点にすべきである。

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