富士宮のロシア語講師 侵攻に涙…平和活動決意 富士に避難のウクライナ男性に謝罪

2022年5月20日 07時44分

避難者と富士市長の面会で通訳を務めた伊藤イリーナさん=富士市役所で

 ロシア侵攻後に富士市に避難してきたウクライナ人男性二人と小長井義正市長の面会に、一人のロシア人女性が同席した。通訳を務めた富士宮市のロシア語講師、伊藤イリーナさん(50)。ウクライナ情勢に胸を痛め、平和を願う活動を続けている。目に涙をためながら故郷への思いを語る二人の姿に、「心の傷の深さを改めて感じ、ショックだった。ロシア人の責任として、戦争が良くないことだと伝えていきたい」と決意を語る。(佐野周平)
 イリーナさんは日本人男性との結婚を機に、十五年前に来日。「きょうだいのような国」ウクライナの惨状を伝える報道に、何度も涙を流してきた。そんな時、富士市国際交流協会のロシア語講座で講師をしていたイリーナさんに、市役所から通訳の依頼が舞い込んだ。
 大歓迎の提案だったが、「ロシア人の私が通訳でもいいのか二人に確認してほしい」と即答を避けた。二人から「問題ない」との回答を得て、ウクライナ語もおおむね聞き取れることから喜んで引き受けた。
 市長との面会があった十七日、初めて顔を合わせた二人は三十代と六十代の親子だった。あいさつした後、ロシア語で謝罪した。「プーチンがやってしまったことを非常に残念に思っている。ロシア人として謝ります」。二人から返事はなく、三十代男性はうつむきながら目頭を押さえていた。「この戦争は、これから何世代も両国の間で尾を引くことになるんだろうなと感じた」と振り返る。
 二人は市長との面会時、時折目に涙をためながら、「ロシア軍に子どもや女性がたくさん殺されている」などと説明した。イリーナさんは「頭では分かっていたけど、何かの間違いであってほしいという希望がどこかに少しだけあった。現実を突き付けられた思いがした」と漏らした。
 イリーナさんは政治や国際情勢に無関心な方だったが、ウクライナ侵攻を機に一変した。インターネットで最新情報を知るためにスマホが手放せなくなり、無縁だった反戦運動にも複数参加するように。避難者を支援する際に使えるように、ウクライナ語の勉強も始めようと思っている。
 侵攻は長期化し、無力感にさいなまれることもあるが、「何もせずにはいられない」と前を向く。

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