<ワタシの「働く」 男女雇用均等法から見る>(下) 性別問わず脱「長時間」

2022年5月20日 08時14分

女性が建設業界で働くことについて話す岩田道子さん(左)と川田知美さん=名古屋市で

 「休みもなくて、月に百二十時間残業したこともあった」。名古屋市内の建設現場で施工管理を担う大手ゼネコン鹿島中部支店(同市)の社員、岩田道子さん(32)は二〇一三年の入社当初を振り返る。
 大きなスケールでものづくりができることに魅力を感じて建設業界へ。だが当時、現場で働く女性技術者はほとんどおらず、結婚や妊娠をすると、設計などの内勤業務に移る先輩も多かった。工事事務所に女性用のトイレや更衣室はなかったが、「他に女性がいないと『女子トイレが欲しい』とは言いにくかった」。

◆男の世界 女性少なく

 「男の世界」のイメージが強い建設業界。今も他の業界と比べて女性の比率は低く、ワークライフバランスの実現が最も難しい業界の一つともいわれる。
 「工期に間に合わせるために、土曜も働くのが当たり前。長時間労働が常態化していた」。一四年から同支店長を務める片山豊さん(66)は話す。
 自身も三十代の頃、残業が月二百時間を超えていた。「子どもの成長過程に向き合えず後悔している。社員には今しかない家族との時間を大切にしてほしい」。着任時、同支店の社員約六百人の残業時間は月平均八十五時間。前任地の大阪の支店で、働き過ぎで心や体のバランスを崩す社員を見てきた苦い経験にも後押しされ、一五年から支店独自で改革に乗り出した。
 推し進めたのは現場の週休二日制。ただ、工事には元請けや協力会社など多くの会社が関わるため、一社だけ休むのは難しい。現場を閉め、一斉休みにしないといけない。そこで従来より工期を長く設定し、受注の段階から週休二日を織り込んだ工事計画を立てて発注側にも協力を求めた。「全てうまくいくわけではないが、公共工事ではそうしたケースが増えている」。この「四週八閉所」は今では、確実に休日が取得できる手段として業界全体に広がりつつある。
 リニア中央新幹線の中部総合車両基地(岐阜県中津川市)の造成現場で働く同支店の小條友樹さん(28)は「想像以上に休みがあって驚いた」と言う。入社五年目。「ゼネコンはきつい」と敬遠する大学院の同期生もいたからだ。現場には先輩十人も単身赴任しているが、週末になるとみんな自宅へ帰る。その姿を見て「いずれ自分も家事育児を」と思うようにもなった。

◆求められる意識改革

 建設業界の女性就業者の割合は今年三月時点で18・6%にとどまる。「少子高齢化で優秀な技術者の確保は急務。女性も目指す業界にする必要がある」と片山さん。ただ、「全ての女性社員が満足できる環境かといえば、まだ道半ば」と苦渋の色をにじませる。
 業界は二年後、大きな転換期を迎える。働き方改革による時間外労働の上限規制(月四十五時間・年三百六十時間)が適用されるからだ。違反した場合、六月以下の懲役か三十万円以下の罰金が科される恐れもある。片山さんは「週休二日制だけでは達成できない。仕事の効率を上げるなど、一人一人が働き方を工夫するのが不可欠」と話す。
 六歳の息子と二歳の双子の娘を育てながら働く同支店営業部の川田知美さん(38)は「夫と家事や育児を均等に分担している。同じ会社で互いの勤務を配慮できるおかげ」と言う。五歳の娘がいる岩田さんも「夫がIT系の仕事で比較的自由がきくから両立できる」。長時間労働を是正して、仕事と家庭を両立していく−。性別や世代を問わず働きやすい職場環境にするためには、個人の意識改革も求められている。
 (この連載は長田真由美、海老名徳馬が担当しました。23日に番外編を掲載します)

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