札幌五輪招致、高まる反対運動 「市民が決めるべき」住民投票求める動きが活発化

2022年5月21日 06時00分
東京五輪に合わせ、札幌市のマラソンコース沿いに設置されたモニュメント=2021年7月撮影

東京五輪に合わせ、札幌市のマラソンコース沿いに設置されたモニュメント=2021年7月撮影

 2030年冬季五輪・パラリンピックの開催地に立候補し、本命視される札幌市で、招致反対運動が活発になっている。巨額の経費、新型コロナウイルスの感染拡大、国際オリンピック委員会(IOC)の専横…。開催リスクは、昨年の東京大会で経験したばかりだ。関係者は「市民の声を聞いて」と住民投票の実現を訴えている。(臼井康兆)

◆開催経費「計画に収まるはずない」

 「開催経費は、札幌市の計画通りの予算で収まるはずがない。開催意義もはっきりしない」。住民投票運動の中心に立つ高野馨さん(63)が語る。
 市の元幹部で、市民文化局長や市民自治推進室長を務めた。3年前に退職し、投票実現を目指して「『オール札幌』市民会議」を先月立ち上げた。
 市には自治基本条例があり、市政に関する重要な事項について、別に条例を定めて住民投票を実施できる。「五輪が重要でなくて、何が重要か。招致の是非は市民が決めるべきだ」。市などに投票を求める要望書を送ったが、反応は鈍い。
 最大の懸念は開催経費。市はコロナ禍を踏まえ、計画の修正案を昨年11月に公表した。経費は約900億円減らして2800~3000億円に。競技施設は2カ所減の13カ所とし、1998年長野大会など市外の会場も利用する。
 市の負担は、施設整備費の半分強の450億円にとどまり、大会運営費はチケット代とスポンサー収入で賄えるという。

◆住民投票条例、成立は不透明

 しかし、東京大会でコロナに翻弄された企業が協賛金を出すか、市外の競技の費用をどの自治体が負担するかなどは不透明だ。コロナの状況、国際情勢も不安要因といえる。
 投票運動に加わる同市の会社員高橋大輔さん(61)は「東京大会では予定の約7000億円が約1兆4000億円に膨らみ、詐欺のようだった。長野大会でも、大会後の施設維持に大金が掛かった」と疑念を抱く。
 こうした市民の動きを受け、今月下旬の市議会で、招致反対の共産党と招致に慎重な市民ネットワークが住民投票条例案を提出する。ただ多数を占める自民党、立憲民主党系の民主市民連合、公明党は招致賛成で、条例案可決の見通しは立たない。

◆札幌市民の意見は二分

 今後のかぎは世論の動向だ。市が3月に行った市民の意向調査では、「賛成」「どちらかといえば賛成」が計52%、「反対」「どちらかといえば反対」が計38%。一方、北海道新聞が4月、市民を対象に行った世論調査では、賛成派が計42%に対し、反対派が計57%と上回った。
 高野さんは「市民の意見は二分しており、条例案を安易に否決するべきでない」とくぎを刺す。否決されても、来春に市長選と市議選を控え、反対運動が継続する可能性は高い。
 30年大会はカナダのバンクーバー、米国のソルトレークシティーなどにも招致の動きがある。開催都市は来年のIOC総会で決定されるとみられるが、今年中に内定するとの見方もある。

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