<社説>明治用水で漏水 水事業の重み忘れるな

2022年5月21日 07時37分
 水の大切さを改めて思い知る事態だ。愛知県西三河地方の「水がめ」である明治用水の頭首工(とうしゅこう)(豊田市)で漏水が発生し、取水できなくなった。自動車関連企業が集積する工業、田植えの時期を迎えている農業にも深刻な影響が出ている。応急策は施されているが、本格復旧のめどは立っていない。
 首をかしげざるを得ないのは、所管する東海農政局が十五日に異変を把握しながら、十八日まで公表しなかったことだ。企業や農家、市民、自治体など利害関係者は幅広い。直ちに報告、公表し、場合によって協力を仰ぐことは大原則だろう。
 漏水は、川底に穴が開いたことが原因とみられる。昨年十二月に小規模な漏水の兆候があり、農政局はその際も今回も当初は砕石を投入して穴をふさごうとしたと説明するが、事態を軽くみてはいなかったか。より根本的な対策を講じることなく、結果的に大規模な漏水に至ったことへの検証が求められる。
 当面は周辺や別の河川からもポンプで水をくみ上げ、しのぐという。修復工事には、いったん水をせき止める必要があり、相当な期間も要しよう。状況次第では井戸水や給水車、排水の再利用などに頼る緊急対応が長引く恐れもある。市民が節水などの協力を求められることも考えられる。県や国土交通省などの助力も得つつ、最新の知見や工法を取り入れて全面復旧を急いでほしい。
 碧海台地と呼ばれる一帯は明治十三(一八八〇)年に用水が完成するまで、長く水不足に悩まされた。頭首工は昭和三十三(一九五八)年に完成し、この地の農業、やがては工業の飛躍的な発展に貢献した。同じく江戸や明治期から高度経済成長期にかけて整備された水インフラ施設は全国各地にある。老朽化対策や耐震化は積年かつ喫緊の課題だが、国や自治体の財政難に加え、昨今は原材料費や人件費の高騰もあり、進捗(しんちょく)状況は必ずしも芳しくない。
 従来は、水道管の更新や長寿命化に焦点が当たってきた。取水施設の川底に大規模な穴が開くような今回の事態は、関係者にも想定外のことだろう。老朽化による設備の腐食などが疑われているが、各地に点在する水インフラ施設でも同じような兆候がないか、点検や、必要に応じて補修工事も急がねばならない。

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