平和の絵本、聞いて 「今、戦争体験しているからこそ」ウクライナと日本の大学生9人で音読動画を作成、配信

2022年5月21日 11時55分
 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、平和をテーマにした日本語の絵本をウクライナ語に翻訳するプロジェクトが今月、完了した。滋賀大(滋賀県彦根市)とウクライナのドニプロ国立大の学生計9人が約1カ月間、取り組んできた。絵本をウクライナ語と日本語で音読する動画を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信している。(堀尾法道)

ウクライナ語の字幕が出る「へいわって どんなこと?」の一場面(ユーチューブから)

 翻訳された絵本は浜田桂子さん作の「へいわってどんなこと?」(童心社)。動画では絵本のページがめくられるたび、「あさまでぐっすりねむれる」「ばくだんなんかおとさない」など、平和を表現する20の文章を両大学の学生が読み上げている。
 プロジェクトは滋賀大生6人とドニプロ大生3人で進められた。一人一人を具材に見立て、協力して1つのお好み焼きができるイメージで「OKONOMIPROJECT」(オコノミ・プロジェクト)と名付けられた。
 9人は3人ずつ3つのグループに分かれ、オンラインで打ち合わせを重ねて翻訳に取り組んだ。滋賀大データサイエンス学部4年の逢坂安曇あずみさん(21)、経済学部3年の森本夏帆さん、現地で日本語を学ぶアンナ・プチェロボドバさんの3人は、7つの文章を訳した。

オンラインで話す逢坂安曇さん

 逢坂さんが「アンナさんの日本語の理解がすごい」と驚くほど、作業は順調に進んだ。「アンナさんが戦争を現在進行形で体験しているからこそできる翻訳」を心掛けた。
 例えば、「いやなことはいやだって、ひとりでもいけんがいえる」の部分は「みんながさまざまな意見が言えるようになるといいね」と将来への願いを込めた。「いえやまちをはかいしない」の訳は「いえやまちがはかいされない」と受け身にした。
 作業の合間には、日本のアニメやアンナさんの飼い猫、授業の話題などで盛り上がった。一方で、アンナさんの友人が戦争でボランティア活動をすることになり、大学の授業に出られないという声や、別のグループの打ち合わせ中に「爆撃の音が聞こえた」という話も耳にした。逢坂さんは「自分の心のどこかに、戦争は自分とは関係がないという気持ちがあったと気付かされた」と振り返る。
 アンナさんから「楽しい時間を過ごせて、仕事にも参加できてうれしかった。言いたいことを伝えられた」とのメッセージを受けた逢坂さんは、動画を見るウクライナの子どもたちへ「当たり前だった平和が、またいつか当たり前になる希望を感じてほしい」と願う。
 配信は6月末まで。滋賀大産学公連携推進機構のホームページまたはユーチューブで「OKONOMIPROJECT」と検索すれば閲覧できる。

 絵本の翻訳 ウクライナとロシアの子どもたちが将来憎しみ合わないようにと、滋賀大の近兼ちかかね敏客員教授らが企画した。ウクライナ語担当の予定だった女性の夫が戦闘で行方不明になり、日本語を専攻する現地の学生が協力。4月上旬からオンラインで作業を進めた。ロシア語訳の完成時期は未定。


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