新型肺炎で「マスク狂騒曲」止まらず 欠品、高値転売、詐欺まで

2020年2月10日 15時16分

品薄状態のマスクを買い占めをしないよう求める張り紙=東京都港区の薬局で

 新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中、感染への不安心理による「マスク騒動」が収まらない。買い占めによって店頭から消え、売り上げは例年の9倍近くまで跳ね上がる。インターネット上では高額転売が横行し、騒ぎに便乗したサイバー攻撃まで登場。一体、どこまで広がるのか。(中沢佳子)

◆どこにもない…定価の数倍で転売

 「購入はお一人さま二点まで」。七日に東京・銀座のドラッグストアを訪れると、そんな張り紙が掲げられていた。しかし、そこにあるのは商品名と値段が書かれた札のみ。「売り切れなんです。次回の入荷も全く分からなくて」と店員の女性。周辺の五店回るも、どこも「メーカー在庫希薄のため欠品」「入荷は未定」と断り書きが出ていた。
 高額転売も横行。フリーマーケットアプリ「メルカリ」では、公式ブログが「適切な範囲での出品・購入にご協力を」と呼びかけていながら、この日も箱入りマスクなどが定価の数倍以上で出品されていた。

◆マスク売上、例年同期比の8.9倍

 市場調査会社「インテージ」によると、一月二十七日~二月二日の全国のスーパーやコンビニ、ドラッグストア計四千店のマスクの売り上げは約百八十七億一千六百万円。同時期の例年平均の約八・九倍に上る。二〇〇九年の新型インフルエンザ拡大のピーク(約六十五億四千万円)をはるかに超え、手指消毒剤やマスク用除菌スプレーの売り上げも例年の十倍以上だった。
 「過去にない異常な事態。メーカーはどこもフル稼働で増産し、毎日出荷している」と明かすのは、マスクやおむつなどのメーカーでつくる「日本衛生材料工業連合会」の高橋紳哉専務理事。この時期は花粉症やインフルエンザへの備えで出荷が増えるとはいえ、例年の比ではないという。「購入量が多すぎて生産が追い付かない。節度ある買い方をしてほしいのだが」

◆詐欺サイトにつながるサイバー攻撃も

 サイバー攻撃も現れた。ネットセキュリティー専門会社「トレンドマイクロ」によると、「マスクを無料送付、確認をお願いします」というメッセージが拡散。URLをクリックすると詐欺サイトに誘導され、クレジットカード情報が盗まれる恐れがある。保健所からの注意喚起を装い、ウイルスに感染するファイルを添付したメールも登場している。
 物が消える不安から買い占めに走る群集心理は今も昔も変わらない。一九七三年のオイルショック時は、トイレットペーパーがなくなるといううわさに、人々が血眼になって店に殺到した。記録的な冷害でコメ不足に陥った九三年は、外米の輸入でしのごうとした政府の思惑をよそに国産米を求める行列が絶えず、「平成のコメ騒動」といわれた。

◆「正しい情報がパニックを防ぐ」

 「買い占めは不安を解消するための獲得競争であり、自衛行動」と東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は指摘する。無駄になるかもしれないと思っても、あれば買ってしまう。今回のように感染症の被害状況や先行きが見通せない時に目立つといい、冷静な行動を促すには不安の増幅に歯止めをかける必要があると説く。
 「客船での足止めやマスクの買いだめなどがショッキングに報道され、不安があおられている面もある。感染の広がりやマスクの供給状況など、正しい情報やデータを出すことがパニックを防ぐ方策だ」     
(2020年2月8日朝刊「特報面」に掲載)

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