[家に電話が来た] 愛知県西尾市 鋤柄(すきがら)和子(61)
2022年5月22日 07時43分
◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[田舎に憧れる] 埼玉県春日部市・パート・54歳 荒木久美子
私には田舎がない。私も、両親も、同じ県内、同じ市内出身で、ずっと同じところに住んでいる。
子どもの頃、クラスメートが「夏休みは田舎のおばあちゃんちに遊びに行く」と言うのを聞くと、羨(うらや)ましいなぁと心底思っていた。
大人になり、知り合った地方出身者たちが「いずれは田舎に帰る」と話すのを聞くと、子どもの頃の夏休みを思い出す。
いいなぁ田舎。
この年になった今でも「田舎」「地元」という言葉になぜか憧れを抱いている私がいる。
親元を離れるという選択をしなかった私は、ずっと同じ景色を見ている。
心の奥で(なんてつまらないんだろう)と思っているのかな。
現実逃避したいのかも。
残りの人生、憧れの地方へ遊びに行こうと思う私である。
<評> 多くの人にとって、ふるさとは「遠きにありて思うもの」。そんな望郷の念に憧れる作者ですが、今後さまざまな地方を巡ってみれば、改めて、地元の魅力に気付かされるのではないでしょうか。
[おやすみスイッチ] 岐阜県羽島市・主婦・27歳 山田玲奈
寝る前に電気を消すのは幼い息子の仕事。
「おやすみなさーい」パチッ。
布団にもぞもぞ。勝手に消すと「まっくら、いやー」と泣いてしまう。自分で暗くしたいらしい。
ある晩、牛乳を切らしたのでスーパーまで散歩に誘った。「行く」と元気良く返事をして、帽子と靴下を持ってくる。意気揚々とドアを開け、階段をトントントン。
エントランスを出ると外は真っ暗。
「だれが、おやすみスイッチおしたの?」と泣きだした。
おかしな言い方に、つい笑っていると、「ぼくが、おす。はやく、つけて!」と猛抗議。
牛乳を諦め、部屋に戻る。家中の明かりをつけると落ち着いた。グスグスしながら「おやすみなさい」と消していく。
いや、まだ寝ないんだけど…。
<評> 日没前におうちへ帰る良い子の仕事は、自宅の照明管理。ちゃんとスイッチを切らないと夜がやってきません。これで、夢の世界へ出かける準備は完了しましたが、ちょっと遊び足りないのでは?
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