「EVの大衆化」進むか 日産と三菱が軽EVを発売へ 自動車各社が開発を本格化

2022年5月23日 06時00分
 日産自動車と三菱自動車が、共同開発した軽自動車タイプの新型の電気自動車(EV)を今年夏に発売すると発表し、国内で「軽の電動化」が本格化してきた。「脱炭素化」の流れで、普通車のEV化が世界的に進む。国内では新車販売台数の4割を軽自動車が占め、各社は軽EVを投入することで、EV市場全体の活性化を狙う。ただ、走行距離の短さや車両価格の高さなど克服すべき課題は多い。(大島宏一郎)

軽EVの日産モデル「サクラ」を発表する同社の星野朝子副社長=横浜市西区で

◆コスト低減で再挑戦

 「EVの普及促進に弾みを付ける存在になると確信している」。新型の軽EV「サクラ」の発売を20日に発表した日産の星野朝子副社長は胸を張った。
 軽EVは日産にとって初めて臨む市場だ。サクラと性能が同じ車を「eKクロスEV」の名で発売する三菱自では、2009年発売の「アイ・ミーブ」以来の再挑戦となる。
 アイ・ミーブは発売当初の価格が400万円超と割高で販売が伸びず、21年に生産を終了した。eKクロスEVの価格は239万8000円から。両社の連携で量産によるコスト低減が可能になったという。三菱自は「アイ・ミーブで培った技術を生かす」(担当者)と意欲をみせる。

◆EV普及へ軽自動車市場にかかる期待

 軽EVはホンダも24年に発売を予定。スズキとダイハツ工業も25年までの投入を目指す。各社が国内特有の規格である軽自動車へあえてEVを投入する背景には、軽自動車が国内新車販売台数の4割を占めている現状がある。
 インフラ環境の変化も追い風だ。国内のガソリンスタンド(GS)は、ピーク時(1994年度末)の6万カ所から2019年度末には2万9000カ所まで減った。日産は特に地方に「GS過疎地」が多いとみる。一方で、地方にはEVの充電器を置きやすい一戸建て住宅に住む人が多く、軽EVの需要を見込める。
 日本自動車販売協会連合会によると、21年の新車販売台数に占めるEVの割合は1%未満。ホンダの三部敏宏社長は、国内でEVを普及させるため「日本の主力である軽自動車の領域を攻略する」との考えを示す。

◆なお残る課題 性能向上や割高感の解消急務

 ただ普及への課題は多い。大手自動車メーカーの関係者は、軽EVは搭載する電池のサイズが普通車に比べて小さいため「(1回の充電で走れる)距離の確保が難しい」と話す。
 日産のサクラの走行距離は180キロと、同社が10年に発売した普通車EV「リーフ」の320キロ超に比べ短い。EVのカーシェア会社「REXEV(レクシヴ)」(神奈川県)の藤井崇史さん(40)は「買い物など日常使いには十分だが、遠出には不安がある」と感じている。
 価格も、ガソリンで走る軽自動車に比べるとまだ割高だ。サクラの価格は233万3100円から。総務省の小売物価統計調査によると、21年の軽自動車の平均価格は約157万円。サクラは国の補助金を受けても、実質負担額は178万円と高い。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一氏は「日常生活の足として軽自動車を使う消費者は低価格志向が強い。車両価格を抑えないと多くの人が購入を尻込みしてしまう」と指摘。「性能や価格の『壁』を突き破らないと市場は盛り上がらない」とみる。

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