<ひと物語>生きている喜び、感じて 「ひきこもりの家族と支え合う会」代表・沢井活子さん

2022年5月23日 07時06分
 「家に閉じこもっていることが多く、望む生き方ができないという若者に、生きている喜びを感じてもらいたい」−。ひきこもりの当事者やその家族らを支援するボランティア団体「ひきこもりの家族と支え合う会」代表の沢井活子さん(73)は、そう力を込める。
 四月、上里町総合文化センター「ワープ上里」の一室で、沢井さんら会のメンバー四人は相談に訪れた女性の話に耳を傾けていた。女性は深い人間関係を築いたり、社会に出て働くきっかけがつかめなかったりして悩んでいるという。
 「とにかく話を聴くことを心がけている」と沢井さん。「サークル活動に参加するのはどう?」などやんわりと提案することはあっても、相手の考えを「違うのでは」と否定は一切しない。相談に来る人は、気持ちを理解してもらえないと感じている場合が多いからだ。これが親や身内の場合は「早く働いてほしい」「将来どうなってしまうのか」と不安が先立ち、話を聴く余裕がない。
 「そんな時に第三者の私たちが聴いてあげて、はき出させてあげる」。言いたいことをそのまま受け取り、自分で考え、まとめられるように手伝ってあげることが理想。「そこに信頼が生まれる」という。約一時間半のやりとりの後、女性は少し柔らかい表情を見せて帰路についた。

社会との積極的な関わり方について、女性(右から2人目)の悩みを聴き、話し合う「ひきこもりの家族と支え合う会」のメンバー=いずれも上里町で

 沢井さんは主婦だった四十代のころ、身内に不登校の子どもがいたことをきっかけに、ひきこもりの問題と関わるようになった。放送大学で苦学の末、四十七歳で認定心理士の資格を取得。県内外の中学校で不登校支援に取り組んだ。
 その中で、子どもが不登校やひきこもりになると「親が悪い」「母親が悪い」と世間から白い目で見られ、親も苦しむことを知った。二〇一九年に会を立ち上げた当初は「ひきこもりと歩む会」だったが、その後に現在の名称に変更。悩みの多くは家族関係で起こると感じたからだ。NPO法人「日本家族カウンセリング協会」で「家族療法」についても学び、「夫婦や親子、兄弟姉妹の関係に問題がないかを分析し、問題の解決に当たることもある。何より家族が楽に生きられたら、ひきこもりの人も楽に生きられるじゃないですか」と笑う。
 会のメンバーは七十〜八十代の元教員や元社会福祉協議会職員ら。沢井さんを含めて四人と小所帯だが、「社会参加しにくい人たちが、社会に出る一歩前の居場所づくり」を目指す。
 「十年、二十年とひきこもっていた人が、いきなり『社会参加します』といっても、すぐに仕事ができたり、人とスムーズに話ができたりするわけではない。社会への適応力を徐々につけていくことを『人慣れ』と言いますが、そんな場所として機能したらいいなと考えています」(渡部穣)
<さわい・かつこ> 1949年生まれ。長崎市出身。85年に家族で上里町に移住。2019年6月に「ひきこもりと歩む会」を立ち上げ、その後に会名を「ひきこもりの家族と支え合う会」と改め、代表を務める。毎週木曜日午後1時半〜3時半に「ワープ上里」で会のメンバーが意見交換しており、ひきこもり当事者らの相談等にも応じている。事前の予約不要。

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