<社説>敵基地攻撃能力 他国防衛にも使うのか

2022年5月23日 07時27分
 政府が、相手領域内でミサイル発射を阻止する敵基地攻撃能力を巡り、「集団的自衛権の行使」にも使えるとの見解を示した。
 日本が攻撃されていないにもかかわらず、他国領域を攻撃できることになれば、専守防衛の安全保障政策が根底から覆りかねない。政府には再考を求めたい。
 政府は、質問主意書に対して閣議決定した答弁書で、日本がミサイル攻撃された場合、敵基地攻撃は認められるとする従来の憲法解釈に言及した上で「このような考え方は限定的な集団的自衛権の行使も含め、自衛の措置としての武力行使にもそのまま当てはまる」との見解を示した。
 歴代内閣は敵基地攻撃が可能な装備を平素から整えることは憲法の趣旨でないとしてきたが、自衛のために敵のミサイル発射基地を攻撃すること自体は憲法上認められる、との立場を取ってきた。
 ただし、敵のミサイルが日本を標的とし、日本が行使するのは個別的自衛権との前提だ。
 これを根底から変えたのが、安倍晋三内閣が二〇一四年に行った「集団的自衛権の行使」容認の閣議決定と、その翌年に成立を強行した安全保障関連法である。
 これにより、日本を守る個別的自衛権に限られていた敵基地攻撃が、日本が攻撃されていなくても外国を守る集団的自衛権にも許容されることになってしまった。
 例えば、米国が他国と戦争になり、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」に至ったと政府が認定すれば、米国を武力で守ることができ、敵国の弾道ミサイル発射を阻止するため、日本がその発射地点を攻撃できる理屈になる。
 ただ、敵国から見ると、敵基地攻撃は日本による先制攻撃にほかならず、当然、反撃する。
 戦火の及ばぬ日本が進んで戦争に巻き込まれていくに等しい。
 国際情勢の変化に対応することは必要だとしても、他国領域を攻撃できる能力の保有宣言は周辺国の警戒と軍備拡張を招いて地域の緊張を高める。日本の安全保障に資するとはとても思えない。
 岸田文雄内閣は、年内改定を目指す国家安全保障戦略に「基地攻撃能力の保有」明記を検討し、自民党は攻撃対象に「指揮統制機能等」も含めるよう求めるが、現行戦略に明記された「平和国家としての歩み」の重要性こそ再認識すべきではないか。

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