<社説>日米首脳会談 安保強化は9条枠内で

2022年5月24日 07時59分
 岸田首相とバイデン米大統領による首脳会談では、ロシアのウクライナ侵攻や中国の軍事的台頭を念頭に、日米両国の抑止力と対処力を強化することも確認した。
 日米安全保障条約体制の意義は理解するとしても、専守防衛を逸脱することは許されない。抑止力や対処力の強化を、憲法九条の枠内にとどめるべきは当然だ。
 大統領が「インド太平洋地域の平和と繁栄の礎」と評した日米安保条約は、日本に常時駐留する米軍が攻撃力を担い、自国防衛に徹する日本を軍事大国化させない役割も果たしてきた。
 首相は会談で、敵基地攻撃能力の保有検討も含め、日本の防衛力を抜本的に強化することを表明したが、日本が敵国の中枢まで攻撃できる能力を保有することは、攻撃力を米軍に委ねた安保条約を変質させるものにほかならない。
 周辺国から先制攻撃の意図ありと疑われ、地域の緊張を高める要因にもなり得る。
 首相が防衛費の「相当な増額」を表明したことも同様だ。
 防衛費を巡り、自民党は国内総生産(GDP)比2%以上とするよう提言し、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国も2%以上を目標に掲げている。
 NATO加盟国は条約に基づいて相互に防衛義務を負っており、経済規模に応じた防衛費の増額には一定の合理性があるが、日本は米国を含めてどの国にも条約上の防衛義務を負っておらず、NATOと同列に考えるべきでない。
 日本が防衛費をGDP比2%にまで増やせば、世界三位の「軍事大国」になり、戦後日本が歩んできた「平和国家の道」を大きく外れてしまう。
 大統領は、防衛力を強化し、防衛費を増額する日本の取り組みを強く支持し、「核の傘」による抑止力も含め「米国の日本防衛の決意は揺るぎない」と強調した。
 日本の防衛力増強を歓迎する大統領の姿勢からは、自国の重い軍事的負担を、日本をはじめとする「同盟国」や友好国に分担してほしいとの本音が透ける。
 国際情勢の変化に応じた安保政策の調整は必要だが、日本の防衛力強化や防衛費増額が周辺国に脅威と映り、軍拡競争に拍車をかけることになれば本末転倒だ。
 日米安保が地域の平和と繁栄の礎であり続けるためにも、岸田政権には抑制的な対応を求めたい。

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