「顔で選んでくれれば1番」 維新・石井章参院議員の発言に批判 この発想はどこからきているのか?

2022年5月25日 11時00分

石井章氏が所属する日本維新の会のホームページ。これも外見重視?

 日本維新の会の石井章参院議員が、参院選栃木選挙区(改選数1)に維新から立候補予定の新人女性について「顔で選んでくれれば1番を取る」などと発言した。与野党から「女性蔑視」「外見差別」との批判が上がり、石井氏は「軽率だった」と発言を撤回し陳謝した。そもそも政策を競うはずの選挙で「顔で選ぶ」という発想はどこからきているのか。(特別報道部・大杉はるか)

◆1番の加害者は、同僚や先輩の男性議員や周りで働く人

 石井氏の発言は15日、日光市で開かれた事務所開きで飛び出した。栃木選挙区には女性5人を含む6人が立候補予定で、石井氏はそれを意識して発言したとも受け取れる。維新は石井氏を口頭で厳重注意した。
 今回に限らず、男性優位とされる政界だけに、女性政治家が嫌がらせを受けるケースは多い。2016年の都知事選では、候補者だった小池百合子現知事に対し、別候補を応援していた石原慎太郎元知事が、「大年増の厚化粧」と揶揄やゆし、物議を醸したこともあった。
 内閣府の20年度の調査では、立候補予定者が有権者や議員らから受けたハラスメントのうち「性別に基づく侮辱的な態度や発言」は、女性が27.2%で男性の11.4%を大きく上回った。
 お茶の水女子大の申琪榮シンキヨン教授(ジェンダーと政治学)は「有権者の票ハラ問題もあるが、1番の加害者は、同僚や先輩の男性議員や周りで働く人」とし、議会や政党、議員のスタッフが日ごろから問題発言を注意することの重要性も説く。「あるべき議員の姿を真剣に考えてほしい」と訴える。
 

◆都市部ではイメージ先行、ポスターに修正も

 石井氏は「顔で選べば」と発言したが、候補者にとって顔は重要なのか。
 選挙プランナーの三浦博史氏は、選挙時に掲示板に選挙ポスターを並べる日本の特異性を指摘した上で「視覚情報、聴覚情報、好感度は大事だ。私が関係する選挙ではその人らしさが出ている写真を使う」と紹介する。「ただ、好感度トップで当選しても、大事なのは国民のために何をするか。間違えてはいけない」
 明治大の井田正道教授(政治行動論)は「支持政党など確固たるものがあれば外見で選ばないが、無党派層、政治的考えがはっきりしていない人は、ポスターだけ見て投票するケースもある。となるとイメージ選挙が出てくる」と語る。
 イメージ選挙は1970年代に新自由クラブがオレンジ色をシンボルカラーにしたあたりから始まっているという。「地縁血縁が薄れ、都市化の流れで、選挙戦略もイメージ重視になる。ポスターも田舎と比較すると、都市部は修整がかかっていて、見た目を気にしている」と説明する。
 本来は政策重視が望ましいが「政策は多岐にわたり、情報量が多すぎる。争点がはっきりしていればいいが、重要争点がない場合イメージの要素が増える」。

◆顔が無意識に影響、無関係な情報に左右されないで

 早稲田大の尾野嘉邦教授(政治学)は2013年、16年の参院選の選挙区候補者約500人の顔の美しさを、約1500人の米国人に5段階で評価してもらい、顔の「魅力度」が1ポイント上昇すると、実際の得票率も5.16ポイント増していることを明らかにした。さらに日本人への調査でも、魅力的な顔を持つ候補者ほど詳しく知ろうとすることや、競争力があると考え、勝ち馬に乗ろうとすることが分かったという。
 その上で「顔の美醜は女性だけでなく、男性にも効いてくる。無意識に選んでいる」と指摘。「だが本当は顔と政策、見た目と能力は関係ない。今は候補者個人に着目させる選挙制度になっているために、顔という余計な情報、ノイズに左右されている。拘束名簿式比例代表制の方が、こうしたノイズを取り除けるだろう。有権者は、顔などの無関係の情報に判断を左右されていないか意識すると、違ってくるかもしれない」
※5月22日付の東京新聞特報面に掲載

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