藤井聡太五冠、叡王を初防衛 出口若武六段に3連勝 通算タイトル獲得数が歴代9位に

2022年5月24日 21時39分

将棋の第7期叡王戦で初防衛を果たし、花束を手にする藤井聡太五冠=千葉県柏市で(沢田将人撮影)

 投了の直後、挑戦者は脇息にもたれ込んで頭を抱えた。24日、千葉県柏市で指された第7期叡王戦5番勝負の第3局。終盤まで藤井聡太叡王(19)=五冠=が劣勢とみられていたが、出口若武六段(27)が最後の最後で勝ちを逃し、急転直下の決着となった。藤井叡王は負けなしの3連勝で、前期獲得した叡王を初防衛。また、タイトル戦の対局での連勝記録を「13」に伸ばし、歴代2位タイとなった。

◆記者会見では貫録も、謙虚さも

 「タイトル戦に出る上で防衛か挑戦かにそれほど大きな違いはない。大舞台で続けて対局できることをモチベーションにしてやっていきたい」。防衛後の記者会見では貫禄も漂わせた。これでタイトル獲得数は通算8期。全棋士中9位の数字で、故木村義雄14世名人や加藤一二三・九段(82)といった大棋士と肩を並べた。「当時とはタイトルの数も全く違うので、並んだという気持ちは全くありません」と、いつも通りの謙虚さも忘れなかった。
 叡王戦はタイトル戦に昇格して5期目だが、これまで防衛した棋士はいなかった。持ち時間はチェスクロック使用の各4時間で、八つあるタイトル戦で最も短く、番狂わせが起こりやすい。また、藤井叡王は2月に王将を奪取した後、叡王戦の開幕までの2カ月半で公式戦が1局のみと対局が非常に少なく、実戦勘を取り戻せるかも懸念された。
 しかしふたを開けてみると、藤井叡王は盤石の横綱相撲で、タイトル戦初登場の挑戦者に1勝も許さなかった。対局の少なかった期間についても「いつもと同じように取り組み、まとまった時間で序盤の定跡を見直していた」と隙がない。

◆涙のんだ出口六段「また頑張りたい」

 一方の出口六段は藤井叡王より7年年長ながら、プロ入りは2年半遅い。プロ入り前の奨励会時代に新人王戦の決勝3番勝負に進出し、藤井叡王に敗れているが、プロ入り後の大舞台は今回が初めて。これまで渡辺明名人(38)や豊島将之九段(32)らトップ棋士とタイトル戦でしのぎを削ってきた藤井叡王との番勝負は、棋力とともに経験の差が浮き彫りとなった。

初のタイトル挑戦で結果を残せなかった出口若武六段(日本将棋連盟提供)

 第1局は終盤の競り合いに持ち込む前に差をつけられた。千日手となった第2局の指し直し局は序盤で作戦負けになり、そのまま押し切られた。「事前に想定した形だったのに思い出せなくなって、悪い変化にしてしまった」と後日振り返っている。それだけに第3局、「ペースを握れた」という中終盤から、秒読みに追われる中、最後の最後で着地に失敗したのは痛恨だった。
 終局直後、大盤解説会場に移動し、ファンの前に立った出口六段は思いがあふれた。「最後は勝ちがあったような気がしたので、ここで終わってしまうのは悔しい。また頑張りたい」と言うと言葉に詰まり、思わず目頭を押さえた。その様子を映像で見ていた解説者の木村一基九段(48)は「1回勝ちたかったという思いと、シリーズ全体への思い入れが出たのかな」とフォローした。自身も過去に何度となく悔しい涙を流してきた木村九段だけに、敗者の心情は痛いほど分かるのだろう。出口六段もまた、この悔しさをばねにはい上がる日が来るはずだ。

◆タイトル戦13連勝…死角なし

 藤井叡王は昨年8月、お~いお茶杯王位戦(東京新聞主催)の第5局に勝って以降、タイトル戦で1度も負けていない。竜王戦と王将戦は4連勝、叡王戦では3連勝と圧倒している。13連勝は、1995~96年に羽生善治九段(51)が当時の全七冠を制覇した際の記録に並んだ。歴代1位は故大山康晴十五世名人が61~62年に達成した17連勝となっている。
 6月からは棋聖戦、王位戦と防衛戦が続く藤井叡王は、偉大な記録に迫れるか。「最近は番勝負に星が集まっている。タイトル戦で結果が出せているのはうれしいが、それ以外の対局も含め内容を向上させなければ」と、さらなる飛躍を誓う姿に、死角は見当たらない。(樋口薫)

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