対ロシアでは温度差くっきり 日米豪印首脳会合 「中国包囲網」強調の陰で

2022年5月25日 06時00分
 24日に開かれた日本、米国、オーストラリア、インドの協力枠組み「クアッド」首脳会合の共同声明は、力による一方的な現状変更への非難や、東・南シナ海を含む航行の自由に対する挑戦に対抗することを明記し、中国を強く警戒する内容になった。岸田文雄首相は4カ国の足並みがそろったことを自賛したが、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの距離感では温度差も見えた。(川田篤志、バンコク・岩崎健太朗)

「クアッド」首脳会合を終えて記者会見する岸田首相


◆「極めて大きな意義」

 「力による一方的な現状変更を、いかなる地域でも許してはならない。自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、力を尽くしていくとの4人のコミットメント(関与)を力強く発信できたことは極めて大きな意義がある」
 岸田首相は議長国として臨んだ首脳会合後の記者会見で成果を繰り返し強調した。共同声明では中国の名指しこそ避けたが、法の支配や民主的価値などがインド太平洋地域の平和と安定に不可欠な原則であることへの「強い支持」を表明。軍事力を背景に中国が海洋進出を活発化させる「東・南シナ海」を指し、ルールに基づく海洋秩序への挑戦に対抗すると打ち出した。
 日米両国は23日の首脳会談でも、同盟強化を通じた中国抑止の姿勢を鮮明にした。オーストラリアとインドを加えた枠組みで「中国包囲網」を印象づけた。バイデン米大統領は首脳会合で「中国の指導者から『なぜ(バイデン氏は米国が)インド太平洋の大国と言うのか』と聞かれたが、実際に太平洋に面している。だから皆さんと連携してきた」とアピールした。

◆深入り避けるインドの「中立外交」

 一致点を見いだしづらいのが対ロシア。特に、歴史的に友好関係を保つインドには違いがある。首脳会合の冒頭発言で、岸田首相とバイデン氏がロシアのウクライナ侵攻を批判したのに対し、インドのモディ首相は一切触れず、共同声明も「ウクライナでの悲劇的な紛争が激しさを増す中、われわれは揺るがない」などの表現にとどまった。
 インドのクワトラ外務次官は首脳会合に先立つ記者会見で、ウクライナ侵攻に関し「われわれの立場は明確で、何度も繰り返し述べてきた」と強調。即時停戦と対話は求めるが、深入りを避ける姿勢を説明した。現地メディアが報じた。
 インドは非同盟中立の立場だが、冷戦期の旧ソ連時代から武器調達などを通じ、安全保障分野でロシアと深い関係を築いてきた。国境紛争がある隣国パキスタン、約3400キロの国境を接する中国をにらんだ外交戦略を最優先に位置付けており、過去には緊張が高まった際にロシアを後ろ盾にしてきた。国連の非難決議や制裁で米欧と協調せず、むしろロシアからの原油輸入量は3、4月だけで昨年1年間を上回った。
 国際関係論を専門とするインド・サウスアジアン大のラジェンドラ・ハルシェ客員教授は取材に「中国と向き合うため、大国の力関係や地理的状況を考慮し、国益をはかるインドの『中立外交』は妥当だ。遠く離れた西側諸国がインドの危機に即時対処するのは難しく、ロシアと友好関係を維持するのは、これまでの外交路線の延長にすぎない」と語った。
 岸田首相も会見で「歴史的な経緯や地理的状況に鑑み、立場が完全に一致しないこともあるのは当然だ」と認めざるを得なかった。

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