原子力機構が昨年運転再開した「JRR-3」公開 研究用原子炉の成果アピール 「安全確保も地域住民に発信」

2022年5月25日 07時30分

多数の試料を連続測定できる即発ガンマ線分析装置(PGA)の説明をする職員

 日本原子力研究開発機構は二十四日、原子力科学研究所(東海村)で昨年、十年ぶりに運転再開した試験研究炉「JRR−3」(熱出力二万キロワット)を報道陣に公開した。医薬品の原料となる放射性元素「モリブデン99」の国産化に向けた製造技術を二〇二五年度に確立するめどがついたことなどをアピール。遠藤章所長は「安全確保の取り組みも地域住民に発信していきたい」と語った。(長崎高大)

ガラス固化技術の高度化につながる研究に用いる集光型偏極中性子超小角散乱装置

 JRR−3は一九六二年に初臨界した国産初の研究炉。東日本大震災後は運転停止していたが、東京電力福島第一原発事故を受けた新規制基準に基づき、耐震強化工事などをした上で昨年七月、運転再開した。
 原子炉建屋や隣接するビームホールには原子力機構や大学の実験装置が約三十台あり、中性子を用いた実験を行う。産業分野の研究も多く、半導体素材、自動車のエンジン、建築物のコンクリート、機能性食品など、さまざまな分野で活用されている。
 昨年度は、「集光型偏極中性子超小角散乱装置」を使い、原発などの使用済み核燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃液をガラス固化する技術の高度化に向けた研究を進めた。ガラス固化体の組成が不均一になる要因が、含まれる添加剤であることが明らかになった。
 「即発ガンマ線分析装置」では、多数の試料を自動で連続測定できるシステムが稼働。試料を破壊せず、含まれる元素の濃度を測ることができ、食品や考古学、美術など幅広い活用が想定される。現在は、小惑星リュウグウで採取した水の分析を計画している。

JRRー3の原子炉=いずれも東海村で

 がん治療に使う放射性元素の製造も再開した。本年度は、咽頭がん治療などに用いる金グレインを国産の七割に当たる七百個、舌がん治療などに用いるイリジウム線源を国産の全数に当たる五十個、製造する予定という。
 JRR−3を巡っては、事故に備えた屋内退避・避難計画の対象の五キロ圏内に約七万七千人が暮らしていることから、昨年の運転再開の際は、長年停止していた施設のトラブルを懸念する声が地元住民らから上がった。現在はコロナ禍で住民向けの施設公開を中止しているが、機構はコロナの状況が改善次第、再開する考えを示している。
 遠藤所長は、安全性について「十年ぶりの再開で、細心の注意を払っている」と強調した。

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