熱海土石流・盛り土損賠訴訟 原告、被告の双方に参加を求められた静岡県は…「原告側に最良の形」を検討

2022年5月25日 07時42分

瀬下雄史さんに県の意向を伝える難波喬司理事=県庁で

 熱海市伊豆山で昨年七月に起きた土石流災害を巡り、犠牲者遺族らが被害を甚大化させた盛り土の土地の前・現所有者らに損害賠償を求めた訴訟で、原告側弁護団が二十三日、被告の現所有者側から裁判への参加を促す「訴訟告知」を受けた静岡県と熱海市に対し、原告側での「補助参加」を求める文書を送付した。県は「原告側にとって最も良い形での参加」を検討している。(塚田真裕、山中正義、佐々木勇輝)
 送付文書では「原告側で補助参加し、被告側の盛り土の危険性の認識など争点について主張、立証してほしい」と求めた。
 この日は文書送付に先立ち、原告の一人で、遺族らでつくる被害者の会の瀬下雄史会長が県の難波喬司理事に電話し、原告側での参加を要請した。難波理事は「皆さんのために一番良い参加の形を検討し、早急に判断したい」と応じた。
 その後の報道陣の取材に、難波理事は参加方法を決めるに当たり「(原告側と現所有者側、県との)法的利害関係の整理が必要」との認識を示し「市とも相談した上で決めたい」と語った。
 同じく現所有者側から訴訟告知を受けていた熱海市は二十日に原告側へ補助参加できるかどうかを打診した。市議会での議決の必要性を含め、手続きを確認している。斉藤栄市長は二十四日の記者会見で「原告に補助参加を打診したのは事実。被災者側に立って何かできないかと考えた」と説明。ただ、正式決定ではなく、「議会の了解も必要だと思う」と加えた。
 市長個人への訴訟告知への対応は「市の方針が決まらないと私の方針は決まらないが、市の対応と相反することはないと思う」と述べた。
 現所有者側の弁護団長、河合弘之弁護士は本紙の取材に対し、熱海市が補助参加できるか原告側に打診したことを「十分予想していた」と語った。「もし県と市が原告側で参加しても(適切な行政対応を怠ったとして)責任を追及していく」と強調。斉藤市長に対しては「避難指示を出さず、(今回の災害の)最後の引き金を引いた人。一番の責任は彼にある」と改めて参加を促した。

 訴訟告知 民事訴訟で、訴訟の当事者が被告以外の関係者に任意で参加を促す制度。告知を受けた関係者は、訴訟に参加すれば主張や立証ができるが、不参加を選ぶことも可能。参加・不参加にかかわらず、判決の効力が及ぶため、告知を受けた関係者の責任が認められた場合、被告が別途、裁判を起こして応分の賠償責任を求めることができる。

◆行政対応巡る総括 「百条委の結論後に」 熱海市長、市長選後の可能性も

会見する斉藤栄市長=熱海市役所で

 熱海市の斉藤栄市長は二十四日、伊豆山の土石流災害で、被害を拡大したとされる盛り土の造成などを巡る当時の行政対応について、市としての最終的な総括を市議会調査特別委員会(百条委員会)の最終報告後に公表すると明らかにした。ただ、最終報告は市議会九月定例会になるとの見方もあり、市長選(九月十一日投開票)後になる可能性もある。
 百条委は六月十四日に証人尋問を予定し、六月定例会での最終報告は困難な見通し。その後の対応は尋問後に決めるという。
 斉藤市長は会見で「百条委の結論を踏まえて最終報告を出すべきだと思う。選挙のためにまとめるのはどうか。行政としてしっかりしたものをまとめる」と説明。市長選については「コメントする状況ではない。目の前の仕事に全力で取り組む」と明言を避けた。
 行政対応を巡っては、県の第三者委員会が「失敗」との最終報告を既に公表している。斉藤市長は、空欄が残るまま盛り土造成の届け出を受理したことなど反省点は「真摯(しんし)に受け止める」としたものの、報告書は県土採取等規制条例に絡む論点が重視され、森林法などその他の法令に関する検証が不十分と指摘。「検証のバランスが欠けている」との見解を示した。被災者に対しては「心から申し訳なく思っている。重く責任を感じている」と述べた。(山中正義)

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