今ある自然、残したい 鎌倉「山崎・台峯緑地」が28日開園 市民と行政足並みそろえ、整備最小限

2022年5月26日 07時16分

山崎・台峯緑地と鎌倉中央公園(鎌倉市提供、一部加工)

 鎌倉市の貴重な自然を守ろうと活動する市民に支えられ、市が土地の買い取りと整備を進めてきた都市公園「山崎・台峯緑地」(山崎など)の工事がほぼ終わり、二十八日に開園式が開かれる。緑地の手入れを続けている住民らは「五十年、百年後の人たちに『良かったね』と言ってもらえたら」と未来を見据える。(石原真樹)
 山崎・台峯緑地は鎌倉中央公園の東側約二七・五ヘクタール。自然林と人工林がモザイク状に混じり、ため池「谷戸の池」の周辺には湿地が広がる。さまざまな野鳥や昆虫が生息し、初夏には蛍が飛び交うなど、美しい里山の風景が見られる。広町、常盤山と並んで「鎌倉三大緑地」と呼ばれる。
 山崎・台峯緑地では一九七〇年代に大規模な宅地開発計画が持ち上がったが、保全を求める住民運動を経て、二〇〇四年に市が保全を公表。市民の寄付金を含む市の予算三十六億円と国の補助金を合わせて計五十四億円で土地を買収し、池のしゅんせつや散策路の柵など整備を進めてきた。買収が済んでいない土地も一部残るが、主な工事が先月終わり、開園を迎える。

「市民と市が折り合いをつけながら協力できた」と話す(左から)出口さん、久保さん、石山さん =鎌倉市で

 都市公園といいつつ、今ある自然を残して最低限の整備にとどめたのが特徴だ。「市民の熱い思いを市職員がきちんと受け止めてくれ、共働できたのが大きい」。保全に取り組んできた「北鎌倉の景観を後世に伝える基金」(元NPO法人、二月に解散し現在は任意団体)の出口克浩元理事長(77)は実感を込める。
 市が保全を公表した後、同基金を含む八つの市民団体と市の担当者で、整備に向けて話し合う連絡会が立ち上がった。スロープの設置などを考える市に対し、市民側は「できるだけ今のままで」「木道など人工物は要らない」と訴えた。会議で険悪な空気も漂ったというが、市の担当職員だった石山由夫・鎌倉風致保存会常務理事(63)は「一緒に現地を歩き、『あそこはこうだよね』と一つ一つ積み上げていった」。台峯を知り尽くし、ささいな変化にも気づく市民の意見は尊重しなければと考え、できる限り取り入れたという。
 同基金元理事の久保広晃さん(63)も「現場を一番歩いている人間の提案だから信用してもらった」と振り返る。「歩く」は団体の初代会長、精神科医のなだいなださんの教えだ。「歩くことは精神にいい、共に肩を並べて歩こう、と。足並みが自然にそろった」
 同緑地や広町緑地の保全には作家の井上ひさしさんらも尽力した。市の歴史をさかのぼれば、鶴岡八幡宮の裏山の開発を防ごうと作家の大仏次郎さんらが住民運動を展開し、自然環境や歴史的建造物を後世に残す「ナショナル・トラスト」の国内第一号とされる「御谷(おやつ)騒動」がある。先人たちを仰ぎ見ながら、緑を守ろうと必死に運動した歴史や思いも後世に伝えたい−。出口さんら三人の願いだ。
 同基金では山歩きと手入れを毎月実施している。詳しくはホームページへ。開園式は午前十時から北管理事務所前であり、テープカットが行われる。

山崎・台峯緑地で雑草を刈る市民ら=鎌倉市で(「北鎌倉の景観を後世に伝える基金」提供)


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