男子トイレのドアに「サニタリーボックスあります」 埼玉で設置進む 尿漏れパッド利用増に対応

2022年5月26日 07時17分

八潮市の公共施設にある男性用トイレに設置された大きめのサニタリーボックス(市提供)

 衛生用品を捨てるごみ箱、サニタリーボックスを男性トイレに設置する動きが、埼玉県内の公共施設で進んでいる。病気や加齢による尿漏れで吸水パッドを使う男性が増えている一方、捨てる場所がないためやむなく持ち帰ったり、トイレに放置されたりするためで、設置場所の拡大を求める声も上がる。(出田阿生)
 さいたま市は、市議会で設置を求める意見が出たのをきっかけに今春、全十区役所やスポーツ施設、文化施設の男性トイレにサニタリーボックスを置いた。以前はパッドが個室内に放置されたり、便器に流されて詰まったりすることもあったという。
 八潮市は三月から市立の小中学校十五校の教職員用トイレなど三十三カ所に置き、「ペーパーに包んで捨てていただけますようお願いします」と周知するポスターを掲示。三郷市は今月、公園の多機能トイレなど五十七施設に設置した。県も三月から県庁の男性トイレ六十三カ所に置き、個室のドアに「サニタリーボックスがあります」と表示している。
 四月に市役所と三カ所の総合支所に設置した加須市には、各地の自治体からの問い合わせが増えているといい、担当者は「全国的にも関心が高まっていることを感じる」と話す。
 国立がん研究センターの統計では、二〇一八年時点で前立腺がんや膀胱(ぼうこう)がんの男性患者は計約十一万人。これらのがんの手術後に尿漏れに悩む人は多い。民間企業の調査でも、四十〜七十代の男性の約八人に一人が尿漏れに悩むと回答した(小林製薬によるウェブ調査・二〇二一年三月)。
 前立腺肥大の手術後に尿漏れがあり、一時は吸水パンツを使っていた川口市の男性(66)は「前立腺を患う男性は多く、術後は尿漏れがある。個人差があるが、パッドは数時間置きに交換が必要」という。男性は「交換したパッドを袋に入れて持ち帰るのは、臭いが気になるし精神的に負担。公共施設だけでなく、企業でもサニタリーボックスの設置を進めてほしい」と訴えた。

◆「困り事我慢せずみんなで解決」 普及後押し 加須の大谷さん

 男性トイレにサニタリーボックスの必要性を訴え、県内で設置が進むきっかけをつくった日本骨髄バンク評議員の大谷貴子さん=加須市=は「人に知られたくない、仕方がないと我慢する男性が多いが、困っていることはみんなで解決したらいいと思った」と語る。
 問題に気付いたのは昨年、交友のあるフリーアナウンサー笠井信輔さんから送られてきた動画だった。膀胱がんで尿漏れ用パッドを使うキャスター小倉智昭さんとの対談番組。その中で、小倉さんが「トイレで交換したパッドを捨てられなくて困る」と語っていた。
 「男性用の個室には置いていないんだ、と初めて気付いた」と大谷さん。問題を解決しようと、周囲の男性たちに声を掛けると「やらなくていい」という答えが返ってきた。当事者の男性が言い出せないことが「壁」になっているのでは−。新聞のコラムに必要性を訴える文章を載せ、知人のさいたま市議に話すと市議会で質問してくれた。県議会でも取り上げられ、自治体の動きも出てきた。
 トイレの環境改善に取り組む一般社団法人「日本トイレ協会」(東京)の砂岡豊彦事務局長も「男性はなかなか悩みを言わない」と指摘。今年二月に行った調査では、パッドなどを使う男性約四十人中、二十五人が「サニタリーボックスがなくて困った」と答えた。
 砂岡さん自身、変形股関節症があり、痛み止めの座薬が溶けて下着に染みるのを防ぐため、妻に買ってきてもらった生理用ナプキンを使うことが過去にあった。砂岡さんは「トイレで捨て場所に困り持ち歩くしかなかった。当時は誰にも言えなかった。もっと当事者の声を集めて発信したい」と話した。(出田阿生)

関連キーワード


おすすめ情報

埼玉の新着

記事一覧