不条理劇「ムッシュ・シュミットって誰だ?」 「同調圧力」テーマに 劇団俳優座
2022年5月26日 07時32分
少数意見を封じ込める「同調圧力」がわが身に及んだ時、あらがうことはできるのか−。誰もが突き付けられうる深刻なテーマをコミカルに描いた不条理劇「ムッシュ・シュミットって誰だ?」が、6月10日から東京・六本木の俳優座スタジオで上演される。 (稲熊均)
物語は、主人公のベリエ氏(田中茂弘)にかかってきた1本の電話から始まる。相手はベリエ氏を「ムッシュ・シュミット」と信じて譲らない。電話だけでなく関わってくる人すべてが「ムッシュ・シュミット」として接してくる。自分が自分であることを守りたい主人公は葛藤し、そして驚きの結末を迎える…。フランス現代劇を代表する劇作家の1人、セバスティアン・ティエリの作で、日本初演となる。
「印象的なのは、違う人間として扱われたにもかかわらず口にする妻の言葉です。『私たちは鮭(さけ)じゃないもの…流れに逆らって泳ぎ続けたら疲れ果てるだけ』。同調圧力はアイデンティティー(主体性)の喪失にもつながりかねないと感じさせる」。本作の上演を企画し、ベリエ氏の妻を演じる斉藤深雪(みゆき)は言う。
上演する劇団俳優座は昨年、全体主義の台頭で個としての人間性がゆがめられる不条理を描いたカミュの「戒厳令」などで紀伊国屋演劇賞団体賞を受賞。本作も「同調圧力」を切り口に、社会と個人の関わりについて問題を提起する。
劇団の有馬理恵社長は「暗黙の力で価値観を押しつける『同調圧力』はシリアスなテーマですが、芝居はコメディーです。見る方々にどう感じ取ってもらえるかは読み取れず、劇団にとってはチャレンジです」と思いを明かす。
6月19日まで。一般4500円など。期間中、前川喜平元文部科学次官や本紙社会部の望月衣塑子(いそこ)記者のトークショーもある。問い合わせは俳優座=(電)03・3470・2888(土日祝日除く午前10時半〜午後6時半)。
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