「実質100%再生エネ」電車…どう実現? 東急電鉄の全線で脱炭素化、温室効果ガス排出ゼロへ<まちビズ最前線> 

2022年5月29日 06時00分
 東急電鉄は4月、国内の鉄道会社で初めて、電車の運行に使う全電力を「実質」再生可能エネルギー由来に切り替えた。年間延べ8億人超の利用客が「温室効果ガスを排出しない」電車に乗り始めた形だが、同社は「ゴールではなくスタート」と訴える。短期間で「実質100%再生エネ」を達成した仕組み、そして今後も排出削減を追求する理由とは。(妹尾聡太)

東急2020系電車㊧は、長く主力だった8500系㊨の約50%の使用電力で走行できる=いずれも東急電鉄提供

◆「環境価値」で再生エネ化

 「実質再生エネ化」したのは、東京と神奈川にまたがる東横線や田園都市線など全8路線(計104.9キロ)。東急電鉄はこのうち世田谷線(5.0キロ)を除く7路線の運行用として、年間約3億5000万キロワット時の電気を東京電力エナジーパートナーから購入している。
 ただ、その電気の多くは実際は太陽光などではなく、火力発電でつくられている。それでも「実質再生エネ」の電気と呼べるのは、全国各地の太陽光や風力、水力などでつくった電気に含まれる「環境価値」をあわせて買っているからだ。
 環境価値とは「二酸化炭素(CO2)を排出しない」といった再生エネなどの長所に価格を付け、売買できるようにしたもの。石炭で発電しても環境価値を組み合わせれば、CO2を出さない「実質再生エネ」の電気とみなされる。環境価値がつくられた再生エネ発電所を特定することもできる。
 この制度を通じた取引の収益は、再生エネの拡充やコスト低減に充てられるため、参入企業が増えるほど脱炭素化が後押しされる。一方で、企業はお金を払えば「実質再生エネ化」できるとも言える。

温室効果ガス排出削減の取り組みを語る経営戦略部の北野喜正さん=東京都渋谷区の東急電鉄本社で

◆「ゴールではなくスタート」

 この点は東急電鉄も意識している。同社経営戦略部の北野喜正さんは「今回はゴールではなくスタート。環境負荷の低減を加速させる」と強調。再生エネへの投資や省エネで「排出ゼロ」を目指す考えだ。
 具体的には、敷地内に太陽光や風力の発電設備、蓄電池などを設け、電車のブレーキ力を効率よく電力として再利用。消費電力の少ない新型車両をいち早く導入し、照明の発光ダイオード(LED)化や空調の効率化なども図る。同部担当部長の根本正さんは、これらの積み重ねが「再生エネ発電所をつくることに匹敵する」と力を込めた。
 実質再生エネの電気を使っている鉄道は、ほかに西武鉄道山口線(2.8キロ)や京急電鉄空港線(6.5キロ)など。海外ではオランダ鉄道が17年に、風力由来の電気で全ての電車の運行を始めた例がある。

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