<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>支え支えられ40年 長崎寄席 地域寄席世話人

2022年5月27日 07時16分

寄席を支える(左から)柴田紀和夫さん、藤井岳美さん、石田隆則さん

 「四十年も続いている会をむざむざと潰(つぶ)したくない。その一心ですよ」
 昨年末、「長崎寄席」(東京都豊島区南長崎)代表世話人の座を柴田紀和夫さん(79)から譲り受けた藤井岳美さん(63)は、歴史ある地域寄席を継承する重責をそう吐露する。
 地元で生まれ育ち、今も地元で会社を経営する藤井さんは、十年ほど前から同寄席に通い始めた。世話人の一人として封筒詰め、チラシ配布などをしていたところ、色物芸人のキャスティングを担当する世話人の石田隆則さん(72)が「柴田さんが『きつい』って言いだした」ことで危機を察知。世代交代を提案したという。
 同寄席が産声を上げたのは一九八二年。地元在住のハーモニカ漫談家・源氏太郎さん(二〇一九年三月没)に「地域寄席をやってみないか」と促された柴田さんが、たった一人で立ち上げた。
 今年で丸四十年。年に六回、南長崎のひびきホール(定員百二十人)で奇数月に開催し続け、二十八日の会で「二百二十九回」。女性三人、男性七人の世話人が手弁当で運営している。打ち上げ参加費も自腹という徹底ぶりだ。

最新のネタ帳(上)と40年前の第1回のネタ帳

 来場者の「九割以上」(藤井さん)が地域住人という地場感が特色。介護施設から通う人、家族に車椅子を押してもらって来る人。都心に足を運べない不自由さを、地域寄席が解消している。
 自腹でのぼりなどをこしらえてくれた商店街会長がいた。自宅で打ち上げを開いてくれた脚本家もいた。人間国宝の柳家小さん、柳家小三治は破格の出演料でしゃべってくれた。
 「(林家)たい平さんは『私のギャラは払える範囲でいいです。いっぱい払ってもらって潰れちゃうと寝覚めが悪いんで』と言ってくれました。励みになりましたね」(柴田さん)
 落語を支える地域寄席という取り組みが、逆に出演者に支えられているという構図が浮かぶ。
 藤井さんは「七月には新聞の折り込みをやる予定です。もっとファンを増やして、運営財政的にも黒字化を目指したいですね」と、さらなる発展を目指す。(演芸評論家)

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