歌舞伎座「六月大歌舞伎」 玉三郎・染五郎 人気役者2人が主役

2022年5月27日 07時16分
 東京・歌舞伎座の「六月大歌舞伎」は人気役者二人が主役を張って登場する。若手のホープ、市川染五郎(17)と大御所の坂東玉三郎(72)。染五郎は歌舞伎座で初の主演に臨み、玉三郎は有吉佐和子の名作に挑む。それぞれに舞台への意気込みを聞いた。

◆玉三郎「人間模様きらめく作品」
「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」に出演する(左から)河合雪之丞、坂東玉三郎、喜多村緑郎

 玉三郎が主演する「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は、有吉が名優杉村春子(故人)のために書いた戯曲で、一九七二(昭和四十七)年に名古屋・中日劇場で初演された。玉三郎にとっても三十年以上、縁のある作品だ。
 幕末の開港間もない横浜の遊郭「岩亀楼(がんきろう)」が舞台。芸者お園(玉三郎)の旧知の遊女亀遊(きゆう)(河合雪之丞)が、アメリカ人に見初められる。亀遊には好きな人がいたが、遊郭の主人は身請けを承諾してしまい、恋がかなわぬことに絶望した亀遊は自害。しかし、その死に「アメリカ人への身請けを断って自害」との話が流れ、攘夷(じょうい)派と開国派の争いの中で岩亀楼は攘夷派の聖地に。真相を知りつつ、お園も亀遊の物語の語り部となっていく…。

お園を演じる玉三郎(撮影・岡本隆史)

 文学座、新派などがさまざまな舞台で上演してきた作品で、歌舞伎座では十五年ぶり二回目の上演。今回は河合、喜多村緑郎ら新派の俳優が出演する。
 玉三郎は、八八年に杉村からお園を受け継ぎ、上演を重ねてきた。「人間模様がきらめく」作品といい、「男のありよう、女のありように深く言葉が突っ込んでいる。楽しむ演劇としてすばらしい作品」と高く評価する。
 共演する河合も喜多村も歌舞伎界から新派に移った俳優。よく知る間柄の二人に、玉三郎は「気楽にやってもらいたい」とエールを送る。
 喜多村は歌舞伎座出演が八年ぶりで、「心の底からうれしい。魂が震える」。六年ぶりに出演する河合も「大きなお役。緊張で震えがとまらない」と話している。 (山岸利行)

◆染五郎初主演「変わらず全力で」
「信康」

信康への抱負を語る市川染五郎

 染五郎は第二部の「信康」で、徳川家康の長男、信康をつとめる。優秀さゆえに織田信長に警戒され、若くして命を落とす悲劇の主人公だ。「決して哀れな人物ではなく、最後まで自分の強さを貫いた人だと感じてもらいたい」と語る。
 時は戦国時代末期。信康に突然、天下統一に近づく信長への謀反の疑いがかけられる。息子を始末するように命じられ、苦悩する家康。信康は、家のために命を差し出そうと決意し−。
 親子の心の葛藤を丁寧に描く本作。信康には、時代劇映画「反逆児」(一九六一年)で描かれた荒々しいイメージもあるが、「冷静で理知的だけど、明るく若々しいところもある」といい、「新しい信康をつくりたい」と意気込む。

信康をつとめる染五郎(撮影・永石勝)

 歌舞伎座という大舞台での初の主演。だが「主役であろうが脇役であろうが、心持ちは変わらない。全力でつとめたい」と気負いはない。上演を前に岡崎城(愛知県岡崎市)、二俣城跡(浜松市)などゆかりの地を訪ね、特に岡崎市の首塚は「生々しく命というものを感じた。本当にいた人、本当にあったことなんだ」と印象に残ったという。
 「二十一歳で若い命を散らせる信康を、比較的近い年齢でやらせていただく。若い世代のお客さまにも、こういう時代があったと感じていただきたい」。そう力を込める。
 放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での木曽義仲の嫡男、義高役の好演が記憶に新しい。アニメ映画の声優など歌舞伎以外の経験も重ね、活躍の場を広げている。
 本作の家康は、祖父の松本白鸚(はくおう)(79)が演じる。「一日一日魂を込めてつとめてほしい」との白鸚の言葉が伝えられると、「祖父は魂を削るような表現をしていて、尊敬している。同じ舞台で、自分も魂を削る表現ができるように信康をつくっていきたい」と表情を引き締めた。 (谷岡聖史)

◆公演情報

 ◇第一部(午前十一時開演)「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ) 車引(くるまびき)」(坂東巳之助、尾上松緑(しょうろく)ら)、「猪八戒(ちょはっかい)」(市川猿之助、尾上右近ら)
 ◇第二部(午後二時十五分開演)「信康」(市川染五郎、松本白鸚ら)、「勢獅子(きおいじし)」(中村梅玉、中村雀右衛門ら)
 ◇第三部(午後六時開演)「ふるあめりかに袖はぬらさじ」(坂東玉三郎、中村鴈治郎(がんじろう)ら)
 公演は六月二〜二十七日(九、二十日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000489。

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