「奇跡の一本松」の壁画ついに10代目 千葉市の銭湯「被災地思うきっかけに」

2022年5月27日 10時40分

新たに完成した十代目の「奇跡の一本松」の壁画を紹介する長沼さん=いずれも千葉市花見川区で

 東日本大震災の被災地を忘れないでー。津波に倒れず残った「奇跡の一本松」(岩手県陸前高田市)を浴場の壁に描く銭湯「梅の湯」(千葉市花見川区)で塗り替え作業があり、十代目の一本松の壁画が完成した。緑あふれる海沿いにそびえ立つ一本松。梅の湯の長沼二三六ふみろくさん(76)は「本当はまだ更地が多いけど、いつか緑が生い茂るといい。復興への希望です」と力を込める。(鈴木みのり)
 梅の湯に一本松が初めて描かれたのは震災後の2012年10月。「壁画を通じ気持ちだけでも被災地を応援したい」と考え、広く知られた一本松を採用した。

現地の写真を見ながら「奇跡の一本松」の壁画を描く絵師の田中さん

 その翌年、長沼さんは陸前高田市を訪ねた。津波で街並みはなくなり、住民もほとんど通らない。避難所の住民は「津波の恐怖はいまだに消えない。一時の同情ではなく、いつまでも被災地のことを忘れないで」と言う。この言葉を胸に、一本松を「復興した」と言えるようになるまで続けよう、と決めた。
 取り組みは評判を呼び、周囲から「一本松の銭湯」と呼ばれ、覚えられるようになった。塗り替えは年1回が目安で、男湯と女湯のどちらかに一本松を描く。陸前高田市の戸羽とば太市長からは、塗り替えのたびにお礼の手紙が届く。訪れた客の中には、「あそこに私の実家があった」と涙を流す出身者や「頑張っているかー」と壁画に向かって呼び掛ける人もいたという。
 十代目の一本松は5月18日、絵師の田中みずきさん(39)が女湯の縦約4メートル、横約6メートルの壁に1日かけて描いた。男湯には宮城県の景勝地・松島の壁画を制作した。田中さんは「絵を見ることが被災地を思うきっかけになれば」と話す。
 震災から11年が経過し、「一本松の銭湯」も足かけ10年。長沼さんは「被災した人たちは震災を忘れられるのが怖いという。震災を風化させてはいけない」と決意を新たにしている。

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