マイナンバーカード あの手この手でついに事実上の取得義務化? 政府の健康保険証、2年後廃止方針

2022年5月27日 17時30分


マイナンバーカードを保険証として使うようPRする厚生労働省の動画=ユーチューブから

 厚生労働省は25日の部会で、「よりよい医療を受けるため」だとして、2年後には現在の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードを保険証代わりにする方針を打ち出した。「国民皆保険」の日本だから、事実上、同カードの取得が義務化されるに等しい。これまでも政府はあの手この手で同カード普及を進めてきたが、医療を受けるという国民の重要な権利を人質にするような強引なやり方でいいのか。(特別報道部・木原育子、中沢佳子)

◆ポイントちらつかせて誘導しているだけ

 26日正午、東京・御茶ノ水周辺。病床400床以上の大病院もひしめき、有名病院も多い地域だ。
 駅周辺の広場で、無農薬野菜やドライフルーツの販売をしていた藤森孝幸さん(74)は保険証は外出時は必ず持ち歩く。「私たちのような年になると、いつ病院にかかるかわからないし」。保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する議論が進んでいると伝えると、「えっ?なくなるの?」と驚き、「便利になるならいいけど、国の説明もいまいちよく分からない。マイナンバーカードも持っているが、言われるがまま持たされてるのが正直なところ」。
 設備機器の営業をする途中で立ち寄った男性(51)は「次は保険証ですか…。露骨に外堀埋めてきた感じですね」とため息交じりに話す。「給付金を受け取る口座と連携したらマイナポイントをあげるとか、国民にポイントをちらつかせて誘導しているだけ。持ちたくない人の意見はいつもそっちのけだ」とし、「保険証ってかなり身近なもの。それがなくなるって結構大転換かと思いますが、急に降ってわいたような…」。
 この保険証廃止方針が飛び出したのは厚生労働相の諮問機関で社会保障について話し合う審議会部会。25日、2024年度中に保険証を原則廃止し、保険証をマイナンバーカードに一体化させた「マイナ保険証」の利用を促す案が示された。将来的には運転免許証も統合され、一元管理化される見通しという。

◆保険証に運転免許証…一元管理怖い

 仙台市から出張中の会社員山岡大祐さん(48)は「保険証も運転免許も資産も全て一元管理なんて、今の国のデジタル環境では、正直怖くてできない」とぴしゃり。「リスクは分散して管理しておきたい」と語る。
 ベンチで昼休憩中だった歯科医師(36)は「良い面はある」とする。「例えば、血液をさらさらにする薬を飲んでいる患者さんに抜歯の手術をする場合は相当注意する。一元管理されることで、より適切な医療を提供できる」と話す。「医療現場は個人情報の扱いに相当気を使ってきた。一元化されると今以上に慎重さが求められる。ガイドラインを作るなど対策が必要だが、あまりに急過ぎる」
 医学部受験を目指し予備校に通う男性(24)も「命に直結する話。なし崩しではなく、もっと議論しないと」と不安視する。大学在学中に脳出血を患い、生死をさまよった。奇跡的に助かった際、医療現場に魅せられ、医学の道を志した。「マイナンバーカードは利益をもたらす面もあるが、損失をもたらす危険もあるもろ刃の剣。国はリスクの面も語るべきだ」と話す。

◆保険証の議論は取得率100%に近付いた後の話

 政府は本年度末までに、ほぼ全ての国民にマイナンバーカードが行き渡る目標を掲げるが、取得率は現在44%。経済ジャーナリストの荻原博子氏は「一般の人が保険証などとマイナンバーカードを分けておき、リスク分散しておきたい感覚はとても正常だ。マイナ保険証の議論は国民の合意が深まり、取得率も100%に近づいた後の話だ。リスクの説明はせず、良い話しか言わない国の姿勢は信用ならない」と話す。
 健康保険証とマイナンバーカードを一体化して、国民にメリットがあるのか。
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