車いすで街歩き「みんなでつくる」 バリアフリーマップ着々更新

2022年5月28日 06時59分

自宅で仕事をするWheeLog代表の織田友理子さん(左)と夫で事務局長の洋一さん(右手前)、スタッフの杉山葵さん(右奥)=いずれも千葉県船橋市で

 あなたの「行けた」が誰かの「行きたい」に−。「みんなでつくる」を掲げたバリアフリーマップアプリ「WheeLog(ウィーログ)!」が今月、リリースから五周年を迎えた。アプリを運営する一般社団法人WheeLog(ウィーログ)代表の織田友理子さん(42)=千葉県船橋市=は、病気の進行でほとんど体は動かないが「車いすになっても、ここに住み続けられるという安心感を得られる情報を提供し続けたい」と活動する。
 ウィーログという名前は、英語で車輪を意味する「WHEEL」と「LOG(記録)」を組み合わせた。アプリは無料で使える。グーグルマップと連携しており、ユーザーは自分が訪ねた場所の情報をスマホなどで投稿でき、他の人が投稿した場所にもコメントを書ける。車いすで通れた道を記録する走行ログ機能もあり、誰かが通った道が地図上に示される。

アプリで見た渋谷駅周辺。走行ログは紫の線で表示され、投稿のあるスポットがアイコンで表示される

 織田さんは二十代前半で筋肉が徐々に痩せて動かなくなる遠位型ミオパチーという難病を発症し、今は電動車いすで生活する。ウィーログを発案したのは二〇一五年。今も代表を務める患者会の活動で知り合った人たちの協力もあり、社会課題を解決する提案に助成するグーグルのプログラムでグランプリに輝き、三年間で最大五千万円使える助成金を獲得した。
 受賞後の同年七月、ケニアでの国際会議に招かれ、策定に向けた議論が進んでいたSDGsの存在を知った。ウィーログが目指す「住み続けられるまちづくり」も目標に入っていた。「障害があってもその仕組みを作れる、助けてもらうばかりじゃなく誰かのためになれる」と思えたのがうれしく、理念に共感した。
 一七年のアプリのリリース後は、各地で街歩きイベントを開催した。駅のどこにエレベーターがあるか、車いす用のトイレはどこが近いか。車いすユーザーは現地で困ることも多い。「テレビで見たお店に行けるのか。事前に分かれば安心できる」と実感する。

渋谷で行われた街歩きイベント=2017年9月、東京都渋谷区で

 アプリ運営のため一般社団法人を立ち上げたのは一八年八月。当初は夫の洋一さん(41)と二人だけで活動し「すごく気負っていた」と振り返る。同年末、体調を崩して入院した際、ボランティアらに助けられ「任せていいんだ」と思えた。
 現在は織田さん夫妻を含めた四人の常勤スタッフに加え、ボランティアらによる運営委員会、戦略室が組織を支える。運営資金は企業やサポーターからの寄付が頼りで、資金調達は課題だ。「一番届けたい人に届かなくなる」と、アプリの有料化はしない。
 観光庁の委託事業で東京五輪・パラリンピック競技会場周辺の飲食店を車いすユーザーが調査した「バリアフリー飲食施設ガイド」では、打診した半分近くの店には掲載を断られたという。「うちはバリアフリーじゃないから、と言われたが、スロープがあるだけでも、店員が手助けをしてくれるだけでもいい」
 六月には、全国各地の有志で一斉にそれぞれの地域を歩き、オンラインで気づきを報告し合うイベントも予定する。少しでも情報発信が増えれば、誰かが行ける場所も増えていく。走行ログを増やし、バリアフリーマップの空白地帯をみんなで埋めていくのを目指している。

横浜中華街のバリアフリーマップは、地元の人らと街歩きをして紙で作成した

◆アプリ5周年 個人の経験、知識を共有

 ウィーログは、多くの人の投稿により一つのスポットに関して複数の情報が集まっていく、集合知を生かしたアプリだ。開発時から携わる技術責任者の伊藤史人島根大助教(47)は「今まで共有されず、共有にどんな意味があるか分からなかった各地域での個人の経験や知識を意義あるものにできた」と語る。現在のユーザー数は約3万人いる。
 継続して使ってもらうため、ゲーム性も取り入れた。走行ログやスポットの投稿数に応じ「新入り」からランクアップしていくユーザーの称号は7段階あり、到達すると「殿堂入り」する。ゲーム感覚で楽しみ、車いすユーザーがどんどん外に出るようになるのが狙いだ。まだ実装できていないが「未来の技術」としていずれ、路面の凹凸の具合も記録できるようにしたいという。
 東京新聞では、より良い未来を模索する動きを取材しながら議論するチームをつくりました。国連のSDGs(持続可能な開発目標)を鍵にして、さまざまな課題を考えます。

◆今月の鍵

 東京新聞では、より良い未来を模索する動きを取材しながら議論するチームをつくりました。国連のSDGs(持続可能な開発目標)を鍵にして、さまざまな課題を考えています。今月の鍵は「目標11 住み続けられるまちづくりを」です。障害の有無などにかかわらず、誰もが街づくりに参加できることは、SDGsが理念とする「誰一人取り残さない」社会をつくる一つの道筋となります。
文・写真 神谷円香

おすすめ情報

明日への扉の新着

記事一覧