<Re Life ローカルへ>5・あなたは、土だ! 田んぼは教えてくれた

2022年5月28日 07時48分

子どもは泥を汚いなどとは考えない

 九十歳にして現役で鍬(くわ)の名器をこしらえる鍛冶屋さんがいる。ある時、言われた。「使ったら土を落としてね。鉄は土に触れていると、懐かしくて土に返ろうとするよ」。ハッとした! そうか、鉄は土由来だ。さびて朽ちるとはそういうことか。人も同じだ!
 千葉県匝瑳(そうさ)市は海側にも山側にも田んぼが広がる。田植え間もない今が、一年で一番いい季節。水面に小さな苗が並び、微風にそよぎ、水はさざ波に揺れ、目も心も奪われる。朝もやの中のそれ、夕暮れ時のそれ、雨の中のそれ、青空と雲を映すそれ、山々や木々を映すそれ。
 自分が食べる米は自分で育てたいと、都心との間を往復したり、都心と二拠点で暮らし始めたり、ついには移住したりした人たち約百組が、今年の手作業の田植えを終えた。初めて田植えをした人たちから感激の声が続々届いた。
 「手を泥に突っ込むと言葉にし難い快感」「安心し、心充(み)ちる」「目肩首がほぐれ楽に」「手に土の香りが残って癒やされる」「夜は私も娘もぱったり眠り、翌朝もすっきり目覚めた」「泥の感覚と匂い、喜びがあふれたカエルや虫に、涙をこらえられない」
 「この田んぼは自分だ」。私も先日、自分の体が泥や水と一体になる感覚に突如包まれた。というか、体の境界が溶け、泥や水と一連の液体になったような。ここの米で自分は生きてきたし、ここに植える苗は来年の体になる。諸行無常・諸法無我というのか、万物は常に変化するが、互いにつながりあっている。
 子どもたちは頭から泥まみれで田んぼを泳ぐ。歳(とし)を重ねるほど、土から遠い暮らしほど、土泥は汚いという意識が芽生えるようだ。子どもは土泥に抵抗がない。「あなたは土だよ」って伝えてくる。
 いや、もう一歩先を行く。私たちは不安から過剰に働き、過剰に買う。結果、環境を壊し、あなた自身も壊してきた。全てを戻してくれるものがある。土、だ! 都会には疲れた人が多い。さすれば土を街に! さもなくば都会離脱を!
 <高坂(こうさか)勝 脱「経済成長」、環境、幸せの融合をローカルから実践。51歳>
※次回は6月25日

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