[炊飯器] 愛知県江南市 山田恭子(72)
2022年5月29日 07時40分
◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[玉手箱] 愛知県岡崎市・パート・55歳 橋本和代
海辺で亀を助けたら、恩返しに竜宮城へ連れて行ってくれた。
毎日おいしい料理が振る舞われた。
家事、育児、パートもなく、食べて寝ての生活は幸せそのもの。
でも、家族のことが気になって、家に帰ることにする。
乙姫様はお土産に玉手箱を持たせてくれたが、浦島太郎を思い出し、そっと隠して置いてきた。
家に帰ると、「どちら様ですか?」と娘の不思議そうな顔。
「お母さんだよ」と言っても信じてもらえない。
ふと、姿見に目をやったら、丸々と太った姿が。三食昼寝付きで、別人のようになっていた。
その頃、竜宮城では、玉手箱を見つけた乙姫様が、
「あーあ、せっかくダイエットサプリを入れたのに」
と呟(つぶや)いていた。
<評> 乙姫様に招かれて、至れり尽くせりのおもてなし。朝から晩まで、ごちそう食べ放題。ごろごろだらだら過ごしていると、どうなるか。手渡されたお土産は、せめてもの心遣いだったんですが。
[貴重な時間] 千葉県市原市・無職・74歳 池田秀昭
このごろのぼくは、とんでもなく早く目が覚める。
早寝早起きは三文の徳と昔から言われてきたが、午前二時、三時の目覚めはいまひとつ早すぎる。
二度寝しようと思っても、頭が冴(さ)えて眠れない。
そこで、ぼくは考えたのだ。
老い先を思うと貴重な時間。目いっぱい、有効利用しようと。
読みたい本を読む。
聴きたい音楽を聴く。
なにせ“積(つ)ん読(どく)”だけの本の方が多い本棚だから、有り難い話なのだ。
そんなことを繰り返しているうちにふと気付いたことがある。
お昼寝タイムが、とんでもなく増えてしまったのだ。
結局のところ、ぼくの貴重な時間は差し引きゼロである。
<評> 決まった時間に起床する必要がなくなると、かえって目覚めが早まってしまうのはなぜでしょう? 悠々自適、理想の時間割を編み出すため、まずはまぶたを閉じて、じっくり考えてみましょうか。
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