「彼の授賞は最高のゴール」 是枝裕和監督作品のソン・ガンホさんにカンヌ男優賞 

2022年5月29日 09時37分
 【カンヌ=谷悠己】第75回カンヌ国際映画祭の授賞式が28日(日本時間29日未明)、フランス南部カンヌで開かれ、最高峰のコンペティション部門で是枝裕和監督(59)の韓国映画「ベイビー・ブローカー」に主演したソン・ガンホさん(55)が韓国人初の男優賞を受賞した。長編初監督作「PLAN75」を出品した早川千絵監督(45)は新人監督賞カメラドールで次点の特別表彰を受けた。

是枝裕和監督作「ベイビー・ブローカー」に主演し、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したソン・ガンホさん=28日、フランス・カンヌ(AP)

 監督賞は「別れる決心」のパク・チャヌク監督が受賞し、韓国映画の隆盛を印象付けた。最高賞パルムドールはスウェーデンのリューベン・オストルンド監督が「トライアングル・オブ・サッドネス」で2度目の受賞を果たした。
 「ベイビー―」はさまざまな理由で育児ができなくなった人が実子を託す「赤ちゃんポスト」を巡る人間模様を描いたロードムービーで、是枝監督が韓国資本を得て製作した。日本公開は6月24日。
 ソンさんは2019年のパルムドールと20年の米アカデミー賞で作品賞などの4冠に輝いた「パラサイト 半地下の家族」に主演したが、個人賞は逃していた。表彰式の壇上で「偉大な是枝監督に感謝したい」と述べた。是枝監督は表彰式後の取材に「ガンホさんの受賞はこの作品にとって最高のゴール。自分のこと以上にうれしかった」と語った。
 8度目のカンヌ参加となった是枝監督は18年に「万引き家族」がパルムドール、13年に「そして父になる」が審査員賞、04年には「誰も知らない」で柳楽優弥さんが男優賞を獲得した。今作は映画祭の独立部門でキリスト教団体から贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。
 学生映画部門でカンヌ参加経験がある早川監督のPLAN75は、是枝監督が18年に総合監修を務めたオムニバス映画の一編を再構築した。早川監督は受賞後の取材に「表彰式の壇上は信じられない光景だった。いつかまたコンペ部門で戻ってきたい」と話した。1997年には河瀬直美監督が「萌の朱雀すざく」でカメラドールを受賞している。

◆「韓国国内でも盛り上がっているはず」 是枝監督一問一答

 28日に開かれたカンヌ国際映画祭の授賞式後、是枝裕和監督が日本メディアの取材に答えた。一問一答は次の通り。
 ―ソン・ガンホさんが男優賞を受賞した
 自分の中では役者がほめられるのは、自分のことよりもうれしい。このプロジェクトにとって彼の受賞は最高のゴールだったと思う。彼はこの撮影の肝でムードメーカーだった。日韓合同チームで主演が男優賞というのは、韓国国内でも盛り上がっているはず。
 ―日韓交流にとっても弾みとなるか

 これをきっかけに日韓のキャストやスタッフの交流が進むと、互いに学ぶことがあるし、そこから新しいものが生まれるのでとてもいいですね、という話を(監督賞を受賞した)パク・チャヌクさんと交わした。進むと思います。
 ―ウクライナ危機下での映画祭。映画の力を改めて感じたか

 直接的に何かに加担するという映画の力もあるし、今回特に感じたのは、コロナ禍後で久しぶりに本格開催できた映画祭で、みんなが映画への愛でつながっていることをあの場所から発信できたことが、一番大きな力になったと思う。
 ―カメラドール特別表彰を受けた早川千絵監督とは話をしたか
 エールを送った。彼女は学生部門で来て、今回長編デビューで受賞して、この後はコンペティション部門が待っている。昨年は濱口(竜介)さんが脚本賞を受賞し、今回は彼女で、日本映画にとって良い流れができていると思う。
 ―フランス映画「真実」に続く韓国映画だった。どの国でも良い映画を撮れる自信になったか
 一つの結果だとは思うが、まずは自分の中で今回できた点、できなかった点を検証しないと、言葉の分からないどこの国で撮っても大丈夫だとは言えない。ただ、いつか、英語圏で撮ってみたいという思いはある。撮りたい俳優がいる。誰かは秘密ですが。

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