カンヌ男優賞のソンさんへ寄せる是枝監督の思いとは 「役に対する取り組みは一番」

2022年5月29日 19時21分
 ソン・ガンホさんの男優賞を引き寄せた是枝裕和監督は、最高賞のパルムドールに輝いた「万引き家族」(2018年)などカンヌ国際映画祭では家族を題材にした作品で高い評価を受けてきた。赤ちゃんポストを巡る不思議な人間模様を描いた今作は、これまで以上に命の尊さや境遇に恵まれない子どもたちへの思いがにじむ。ソンさんはその意図を理解しようと、是枝監督と意見交換を繰り返して役を深めた。

カンヌ国際映画祭で男優賞に輝き、是枝裕和監督㊧に祝福されるソン・ガンホさん㊥(AP)

 本紙のインタビューに対して、是枝監督はソンさんの撮影時の印象を明かした。「脚本を直す度にちゃんと読んで意見を言ってくれる。役に対する取り組みは彼が一番だった」
 赤ちゃんポストに関心を持っていた是枝監督は、韓国が日本より受け入れ数が多く、問題化していることを知り、早くから韓国での映画化を構想。海外の映画祭で交流があり、「いつか一緒に映画を」と話していたソンさんを想定してプロット(筋)を書いたのが16年だった。「最初は彼が牧師の格好で受け取った赤ちゃんを裏で売る姿が浮かんだ。ちょっとうそくさい感じで」と笑う。
 劇中では金目当ての赤ちゃんブローカーだったはずのソンさんが、旅を通じて少しずつ人間味を出していく。是枝監督によると、脚本の最後の3分の1はあまり決めずに撮影していて、ソンさんに「芝居を見ながら着地点を一緒に探そう」と提案していた。そんな難しい状況でもソンさんは常に積極的だったという。「こちらがパターンを示す度に意見を言って、芝居もちょっとずつ変えてくれる。そういうやりとりは本当に面白かったし、いるだけで存在感があった」
 日本と韓国を代表する映画人同士の卓越した関係が生みだした今回の快挙。「親に捨てられた子どもたちに見せても恥ずかしくない映画にしたかった」という是枝監督の強い思いは、世界的な名優になりつつあるソンさんの存在感とともに審査員に届いたようだ。(藤原哲也)

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