<ひと物語>胃袋つかむ町おこし さきたま古墳・行田古代米カレーの会会長 田中利幸さん

2022年5月30日 07時34分

行田古代米カレーの魅力を紹介する田中利幸さん=いずれも行田市佐間のレストラン「ラノッキオ」で

 前方後円墳の形に古代米を盛り付けたカレーが、行田市内の飲食店で提供されている。名付けて「行田古代米カレー」。行田市の町おこしと、市内の埼玉(さきたま)古墳群のPRを狙ったメニューだ。
 仕掛け人はイタリア料理研究家で「さきたま古墳・行田古代米カレーの会」会長の田中利幸さん(65)。十年前、知り合いのレストランオーナーが、古墳が多い群馬県のPRとして古墳カレーを企画。行田市でも作ってみてはどうかと勧められた。
 かねて地域貢献に関心があった田中さんは普及を決めたが、行田市内にはつてのある飲食店がない。そこで一軒一軒、飛び込みで協力してくれる店を探した。
 反応は厳しかった。「メリットはあるの?」「なんで会費を出してまでやらないといけないのか」。飲食店にとって新たなメニューを作るのは大きな労力がかかる。「今考えれば当然のこと。本音を語ってもらえた」。それでも「行田が好きで何か町おこしをしたかった」と参加を快諾してくれる店主もいた。最終的に十七店から協力を得られ、二〇一四年六月に会を立ち上げた。
 行田古代米カレーの条件は、地元産もしくは会が認めた古代米を使い、前方後円墳の形に盛り付け、地産地消の食材を一つ以上使用して各店自慢のカレーにすること。行田産の野菜やハーブを使ったり、行田のご当地グルメ「ゼリーフライ」を添えたり。カレーの種類もビーフやチキン、キーマカレーやスープカレーなど多種多様だ。現在は十四のレストランやカフェ、ホテル、大学の学食などで提供している。
 「行田に古墳を見に来た人が毎回違う味を楽しめるのも魅力です」と田中さん。さらに「古代米はカレーによく合う。ミネラル分がカレーのおいしさを引き立てる」とアピールする。
 田中さんは協力店を開拓するかたわら埼玉古墳群について一から勉強し直し、世界遺産登録を目指す活動にも取り組んだ。五世紀末〜七世紀初めに築かれた前方後円墳八基などからなり、この時期では全国的にも突出した規模とされ、金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)など国宝指定の出土品を含め学術的価値が高い。世界遺産登録こそかなっていないが、二〇年三月には県内で初めて国の特別史跡に指定された。「国宝級の価値があるということ。もっと多くの人に知ってほしい」と熱く語る。
 今年四月には古代米カレーの店を紹介するマップを六年ぶりにリニューアル。国指定特別史跡記念と銘打ち、古墳の紹介や特別史跡の意義などにも触れている。「コロナ禍で相当なダメージを受け、苦労している店舗を応援したい」との思いも込めた。

リニューアルした行田古代米カレーの食べ歩きマップ

 「地元の子どもたちにも古墳を知ってもらい地元愛を深めてもらえたら」。町おこしで始めたカレー事業とともに古墳への愛は深まる一方だ。(寺本康弘)
<たなか・としゆき> 1956年、行田市出身。武蔵野音大を卒業後、オペラ歌手養成所を経てイタリアに留学。94年に帰国し、行田市を拠点に声楽家とイタリア料理研究家として活動する。食べ歩きマップは「観光物産館ぶらっと♪ぎょうだ」などにあり、会のサイトでも見られる。古代米カレーの提供日や時間は店によって異なる。

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