農地で太陽光発電を始めるコツって? 小田原の小山田さんが「ソーラーシェアリング」の実践書出版

2022年5月31日 07時29分

ソーラーシェアリングの水田で田植えをする市民ボランティアたち=いずれも小田原市で

 耕作しながら太陽光発電する「ソーラーシェアリング」に取り組む小田原市の社会起業家小山田大和さん(42)の初の著書「食エネ自給のまちづくり 僕が再生可能エネルギーに取り組んだ4000日」(田園都市出版社)が出版された。「農業委員会への許可申請のポイントなど、実践書が少ないソーラーシェアリングをだれもができる手引書を目指した」と、具体的なノウハウを紹介している。(西岡聖雄)
 郵便局員だった小山田さんは東日本大震災・東京電力福島第一原発事故後、原発に依存せず、自然エネルギーで第一次産業の課題を解決する活動を始めた。
 農業は初体験ながら、休眠状態のミカン畑を再生し「おひるねみかんジュース」を販売。耕作放棄地で営農し、太陽光発電する売電事業では、水田のソーラーシェアリングに県内で初めて成功した。収穫した酒米を井上酒造(大井町)に販売し、新酒「推譲(すいじょう)」が誕生した。醸造工程も再エネ電力を使い、世界的に珍しい脱炭素銘柄だ。
 農地で発電した電力を既存送電網を使い、数キロ先のカフェに送る新たな自家発電・消費モデルも構築、固定価格買い取り制度に頼らない市場創出を目指す。
 「ソーラーパネルの下で農作物が育つのか」といぶかられる中、人のつながりで課題を克服。金融機関の融資を受けられなかったソーラーシェアリング四号機は市民に出資を呼び掛けると、建設費八百万円が一日で集まった。再エネ循環型社会を願う時代の熱を肌で感じたという。
 韓国やドイツなどもソーラーシェアリングの大規模な研究を始め、小山田さんは「日本で生まれたソーラーシェアリングがこのままでは後れを取る。国家戦略が必要」と警鐘を鳴らす。
 自然エネルギーの活用・普及を進める城南信用金庫名誉顧問の吉原毅さん、元文部科学事務次官の前川喜平さん、元経済産業省官僚の古賀茂明さんらとの座談会も本に盛り込んだ。化石燃料の普及で農村が衰退した歴史、規制と利権、地域自給圏と働き方、農林水産省と経産省の統合論、教育改革などで広く意見を交わしている。

本の座談会で登場する左から吉原さん、古賀さん、小山田さん、前川さん

 再エネ事業は地域活性化と関係が深く、小山田さんは「年四百五十億円のエネルギー支出が地域外へ流出する小田原市の場合、一〜二割でも自給できればその分地域が潤う。ソーラーシェアリングの工事は地元の工務店にも可能」と話す。
 A5判・二百二十二ページ、千六百五十円。問い合わせは小山田さん=電090(7008)4455=へ。

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