<考える広場>どうする ごみ問題

2022年5月31日 07時21分
 五月三十日は「ごみゼロの日」。循環型社会確立のかぎとして、リサイクル(再生利用)、リユース(再使用)、リデュース(廃棄物の発生抑制)の「3R」に注目が集まる。どんな行動が必要だろうか。

<ごみゼロの日> 5月30日(530)の語呂合わせによるごみ減量活動。愛知県豊橋市の山岳会会長らの呼びかけで、1970年代に始まり全国へ拡大。厚生(現・厚生労働)省が93年に5月30日を初日とする「ごみ減量化推進週間」を正式に制定。現在は6月5日(環境の日)までを「ごみ減量・リサイクル推進週間」と定めている。

◆有料化は減量に効果 東洋大名誉教授 山谷修作さん

 家庭ごみは、二〇〇〇年ごろをピークに減少傾向をたどりましたが、新型コロナウイルス対策としての外出自粛の影響で二〇年度に三千二万トンと前年度より増えました。ごみ減量が叫ばれていますが、そもそもなぜ、ごみを減らさなければいけないのでしょうか。その背景には、最終処分場の限界と環境負荷の問題があります。
 日本の国土は非常に狭く、最終処分場の新たな整備は、地域環境の悪化を懸念する住民の反対もあって、非常に困難です。また、かつてごみの環境問題は、悪臭や騒音、交通混雑など地域環境の面から語られてきましたが、最近では地球環境の問題としてクローズアップされてきています。日本は一昨年十月、五〇年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を実現すると宣言しました。廃棄物の分野でも、ごみを減らすことで、ごみ処理に伴って排出される温室効果ガスを削減することが求められています。
 家庭ごみの減量には、手数料を含む有料の指定ごみ袋で排出を求める「家庭ごみ有料化」が非常に効果的です。私の調査では今年四月時点で、全国千七百四十一の市区町村(区は東京二十三区)のうち約65%に当たる千百二十七市町村が実施しています。人口比率で見ると、約43%の人に適用されています。
 有料化された自治体では、平均的には一リットル一円程度で価格付けされた有料の指定ごみ袋で、市民はごみを出さなければいけません。誰だって、ごみにお金をかけたくありませんよね。どうしたらごみを減らせるかと、減量に関心を持ってもらう動機付けになります。また、これまで可燃ごみで出していた、紙箱やコピー紙といった雑がみ、食品トレーなどの資源ごみも、分別して出す誘因となります。
 実際の効果はというと、ごみ袋の価格が高いほど減量効果は大きく、有料化後もリバウンドしていません。有料化の最大のメリットは、ごみ減量へ意識が高まること。それによってごみの発生量が減り、リサイクルも進むだけでなく、ごみ収集に伴う人件費の減少、処理施設の規模縮小化にもつながります。
 有料化はごみ減量を「自分事」として受け止めてもらうきっかけになります。誰もが自然体でごみ減量、環境負荷の軽減に参加できる仕掛けづくりが大切です。(聞き手・飯田樹与)

<やまや・しゅうさく> 1949年、新潟県生まれ。東洋大名誉教授、ごみ減量資料室代表。専門は環境政策。特に廃棄物行政に詳しく、全国の自治体にフィールドワークを実施している。

◆人、物にリスペクトを お笑いタレント・ごみ清掃員 滝沢秀一さん

 ごみ清掃員をしていると、いろいろなものが見えてきます。最初に驚いたのは、ごみの量でした。清掃工場には、横四十メートル、縦三十メートル、深さ二十メートルのごみだめピットがあります。そこに、ごみがびっしり。ぞっとするような光景でした。
 ある日、ベテランの清掃員に聞いてみました。最終処分場は満杯にならないんですか。こう言われました。なるよ、東京はあと五十年だ。衝撃を受けました。それでも、東京はまだいい方で、全国平均だと、あと二十年だそうです。
 ごみ減量のため大切なのは、資源とごみをしっかり分別することです。資源とごみは全く別のもの。ごみは燃やすとどうなるか。消えてなくなるわけではなく、灰が残ります。灰は最終処分場に埋められます。
 清掃員になって、僕の意識は変わりました。生きていれば、ごみは出るけれど、量を減らそう。例えばカレンダーや封筒は地域によっては古紙として回収します。すると、また紙として生まれ変わる。紙とプラスチックを資源化すれば、ごみは三分の一ぐらい減らせます。
 僕が清掃員を始めてから、周りの芸人たちも分別するようになりました。顔が見える社会って、こういうことですかね。誰が回収するか分からないと、適当に捨ててしまう。食品ロスの問題も同じで、誰が作ったか分からないから、簡単に捨ててしまうのかもしれません。
 回収の現場で、いま目に付くのは、洋服や食品の大量廃棄です。まだ着られる服、食べ残しを平気で捨てる。「金を出して買ったんだからいいだろう」。そんな傲慢(ごうまん)さが見え隠れします。そういう社会の在り方はおかしいと僕は思います。
 「ラストロング」という言葉があって、僕は大好きです。愛する物を命がなくなるまで大切に使う。そんな意味です。物を買うとき、そこで一度、考えてみてください。これを愛し、ぼろぼろになるまで使い切ることができるかどうか。
 ごみとして生産される物はありません。人がごみだと思った瞬間、ごみになるんです。リサイクル、リユース、リデュースの3Rに、もう一つのRを加えたいと僕は考えています。それは、リスペクトです。物に対する敬意、作った人への尊敬があれば、簡単には物を捨てられなくなるはずです。(聞き手・越智俊至)

<たきざわ・しゅういち> 1976年、東京都生まれ。98年に西堀亮さんとお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年からごみ清掃員の仕事も始める。環境省の「サステナビリティ広報大使」。

◆お得感あれば動ける 家計整理アドバイザー 坂元真理子さん

 ドイツに約十年住んで、一九九六年に帰国したとき、ごみの多さにカルチャーショックを受けました。買い物から帰ったら「私、ごみを買ってきたの?」と感じるほど。中でも、お菓子や野菜の袋、ペットボトル、食品トレーなどプラスチックごみの山には閉口しました。
 ドイツでは、野菜は包装なし、洗剤、砂糖、お菓子、冷凍食品などの多くが紙包装。瓶代が返金される飲料のケース買いも普通でした。包装資材のリサイクル回収システムも整っています。レジ袋は、ほとんどの店が有料だったので、マイバッグ持参が当たり前でした。
 有料と言えば、家庭ごみの回収も有料でした。まず、一年分のごみシールを買います。シールを貼らないと、回収してくれません。一年後、使わなかったシールを役所に持っていけば、返金してもらえます。家庭から出るごみを減らせば、メリットがあるシステムです。
 ごみ問題とは異なりますが、車のアイドリングストップも当たり前でした。二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるためです。そんなところにも、環境先進国といわれるドイツに住む人の意識の高さを感じました。
 帰国後も私は、マイバッグを持って買い物をしていました。なぜ、レジ袋を有料にできないのかな。不思議に思っていました。二年前から、やっと有料化され、ほっとしました。今では多くの人がエコバッグを使っています。やってみれば、別に問題はないですよね。
 日本は、ドイツより三十年ぐらい遅れている感じです。ただ少しずつ前進はしています。特に、企業の取り組みは評価されていいと思います。資源ごみの店舗回収も便利です。ワイン瓶のリユースをしているお店もあります。最初だけ瓶代を払い、次は空き瓶を持って行けば、ワイン代だけで済みます。
 服や靴の量販店では、古くなった服や靴の下取りで、値引きしてくれるところもあります。ごみ減量につながり、消費者にはお得感があります。お得感があるシステムを作れば、人は自然に動きますね。
 今の豊かさは、温室効果ガス排出の上に成り立っています。でも、若い世代には環境意識の高い人が多いように感じます。日本にも希望は見えていますね。私も、自分にできることを「ちりも積もれば」で頑張ります。 (聞き手・越智俊至)

<さかもと・まりこ> 1960年生まれ。佐賀県出身。結婚を機に86年から約10年間、ドイツで暮らす。現在は家計と整理、ごみなどに関する講座を開く。著書に『うちのごみ箱には生ごみがない!』。

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