<フロンティア発>「三体核力」存在を実験で証明 関口・東工大教授 猿橋賞受賞決まる

2022年5月31日 09時00分

猿橋賞受賞を喜ぶ関口仁子さん=東京都千代田区で

 全ての物質をつくっている原子の真ん中には、原子の大きさの10万分の1ほどの原子核があり、その中に陽子や中性子がぎゅっと詰め込まれています。この小さな空間に陽子や中性子を閉じ込めているのが「核力」という力です。
 核力にはまだ分かっていないことが多くあります。その新たな理論を、実験で証明した関口仁子(きみこ)・東京工業大教授(原子核物理学)が今年の第42回猿橋賞の受賞者に決まりました。
 そのテーマは「原子核物理学における三体核力の実験的研究」。湯川秀樹博士が1935年に原子核の陽子と中性子の間で中間子という粒子を交換することで核力が働くという説を提唱し、49年にノーベル賞を受けました。この核力は、二つの粒子の間で働く「二体核力」でした。
 その後、50年代に入って合計三つの陽子や中性子の間で働く「三体核力」が提唱されました。三体核力は、二体核力に比べ極めて小さいことから測定が難しかったのですが、2002年、関口さんらは加速器を使った高精度の実験結果からその存在を証明しました。
 三体核力の検証には、厳密な理論計算と高精度の実験の両方が必須だといいます。実験が専門の関口さんは「三体核力の理論は未完成なので、実験で確信の持てる核力の理論を築きたい。その先に広がる物理を見てみたい」と抱負を語ります。三体核力は、天文・宇宙の分野でも超新星爆発などでできる高密度な中性子星の理解につながることも期待されます。
 小中学生のころは「頭は日本史でいっぱい」で紫式部や清少納言の世界に夢中でした。しかし「物理が分からないから知りたい」と、東京大の物理学科に進み、大学院で三体核力の研究を始めました。歴史を調べることは物理学にも通じるといいます。「先人の仕事をひもとくと古い論文にたどり着き、そこにすてきな考えがあったりする」。息抜きはスマートフォンに撮りためた上野動物園のパンダの写真を見ることだそうです。
 猿橋賞は、自然科学で顕著な業績を収めた50歳未満の女性科学者に贈られる賞です。関口さんは「忍耐強くデータを測定するという、私なりの長所を生かした研究が評価されてうれしい」と話します。「今も、自分では物理が得意だとは思いません。他の人から向いてないと言われても、面白いと思うことにぜひ取り組んでください」と後輩にエールを送ります。(増井のぞみ)

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