6月から水際措置を大幅緩和 インバウンドへの期待と感染拡大の懸念が交錯<新型コロナ>

2022年6月1日 06時00分
 政府は1日、新型コロナウイルスの水際対策を大幅に緩和し、1日当たり1万人の入国者枠を2万人に拡大した。感染状況が落ち着いている98カ国・地域からの入国者は出国前の陰性確認を条件に入国時検査や自宅・施設待機を免除。10日からは約2年ぶりに外国人観光客の受け入れを再開し、経済活動の正常化に軸足を移すが、新たな変異株や欧米などで広がる感染症「サル痘」の流入への備えが課題となる。
 検閲措置の緩和策は、感染状況に応じて国・地域を「青」「黄」「赤」に分類。全員に出国前72時間以内の陰性証明を義務付けるが、一律に行っていた日本到着時の抗原定量検査は「青」の先進7カ国(G7)各国や、中国、韓国など98カ国・地域なら免除する。「黄」のインドやベトナムなど99カ国・地域でもワクチンを3回接種していれば不要とする。
 国内の感染状況が内閣支持率に直結した安倍、菅政権を教訓に、岸田文雄首相は海外からのウイルス流入阻止を防ぐためとして、先進国で最も厳しい水際対策を継続。だが、2019年に5兆円近い消費をもたらした3000万人超の訪日客は激減し、地域経済は打撃を受けた。ビジネス客を含めた入国者数の上限が設定され、海外展開する企業や経済界から「鎖国状態だ」と批判が上がっていた。
 SMBC日興証券の牧野潤一氏の試算によると、入国者上限を引き上げ、米国など4カ国の観光客を受け入れるだけで年間6900億円の消費が生まれる。首相は5月31日、官邸で記者団に「円安のメリットを受けられるインバウンド(訪日観光客)再開は、地域経済に大きな意味がある」と強調。国際線の受け入れ先も那覇、新千歳の2空港を追加し、さらに広げていく考えを示した。
 一方、水際対策の緩和で懸念されるのは海外からのウイルス流入だ。訪日観光ツアーの実証事業では参加者1人のコロナ感染が判明した。
 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は、添乗員同行のパッケージツアーに限られるのなら「大きな感染拡大にはつながらないだろう」と指摘。その上で「別の変異株が世界で確認された際には、迅速に水際を強化する柔軟な対応が必要だ」と語った。(山口哲人、曽田晋太郎)

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