唐突な「資産所得倍増」計画、実現は53年後? 岸田首相の「新しい資本主義」の恩恵は富裕層へ集中か

2022年5月31日 20時57分
 岸田首相の看板政策である新しい資本主義の柱は、株式や投資信託などの保有者が税優遇を受けられる「資産所得倍増プラン」だ。ただ、個人株主の割合は日本人全体の1割程度で、政策の恩恵は富裕層に偏りかねない。首相が昨秋の就任時に強調していた「格差是正と分配」からは大きくかけ離れた内容となった。(原田晋也)
 実行計画案で、個人の金融資産2000兆円のうち半分以上が預金や現金で保有されていると指摘。これら資金を投資に向かわせるため、少額投資非課税制度(NISA)の「抜本的な改革」や、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象年齢を現行の64歳以下から65歳以上に引き上げることを検討した上で、今年末に「資産所得倍増プラン」を策定する。
 しかし、日本証券業協会によると、2020年度末の個人株主は日本人全体の11.2%にとどまり、高齢者層が多い。現役世代は投資に資金を回す余裕に乏しいとされ、今回の株式投資への優遇策は「金持ちに恩恵が集中する」(経済官庁幹部)との批判もある。
 首相は昨年9月の自民党総裁選で、「令和版所得倍増」を掲げて勝利した。だが、その後の衆院選の公約や所信表明演説では所得倍増の方はトーンダウンした。代わりに、5月5日になって突然、外遊先のロンドンで表明したのが「資産所得倍増プラン」だった。
 野村総研の木内登英たかひで氏は「所得再配分の重要性を若干落とし、株式市場を味方につける戦略に軌道修正したのではないか。その意味では安倍政権時代に少し戻った」と指摘する。
 一方、「倍増」の達成時期は明らかにしていない。首相は5月13日の衆院内閣委員会で、資産所得倍増について「期限は区切っていない」と答弁した。木内氏によると、直近10年の家計の資産所得の増加ペースが今後も続くと仮定すると、2倍になるのは今から53年後になるという。

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