挑戦者に豊島将之九段 藤井聡太王位と雪辱戦へ お〜いお茶杯第63期王位戦

2022年5月31日 22時32分

 将棋のお〜いお茶杯第63期王位戦(東京新聞主催、伊藤園特別協賛)の挑戦者決定戦が31日、大阪市の関西将棋会館で指され、午後8時30分、先手の豊島将之九段(32)が171手で池永天志五段(29)に勝ち、藤井聡太王位(19)=竜王、叡王、王将、棋聖=への挑戦権を獲得した。豊島九段は2年連続の王位挑戦。1勝4敗に終わった前期のリベンジを狙う。(樋口薫)

◆昨年のリベンジへ 藤井王位に挑む

豊島将之九段

 「こちらの玉が危ない形になり、自信がなかった」。局後、豊島九段がそう振り返ったように、終盤まで形勢不明の大激戦となった。初タイトルを目指す池永五段が積極的な攻めを見せたが、歴戦の豊島玉は生命力が違った。当初は左下の8八の地点に囲われていた先手玉は、猛攻に追い立てられるように中段をさまようと、敵陣の手前の5四の地点で後手玉と向き合い、最後は右端の1七の地点に戻ってきて安全を確保。戦場を間一髪で駆け抜けた大移動の軌跡が、本局の激戦ぶりを物語っていた。
 感想戦後のインタビューで「まずい手を指してしまった感触はあったが、最後まで集中して指すことができた」と振り返った豊島九段。2年連続の王位挑戦について「無冠になり、タイトル戦に出られる保証はなかったので、また指せることになってうれしく思う」と率直に喜びを語った。
 昨年の王位戦7番勝負では藤井王位に挑戦するも敗退、さらに叡王戦、竜王戦では逆にタイトルを奪われ、無冠に転落した。「19番勝負」と呼ばれた激闘を通じ「実力不足を痛感し、自分の将棋を変えようと思うきっかけになった」。その「変化」という言葉を、今回の王位リーグの対局を通じて強調していた。「20代後半のころと比べ、さえない将棋が増えている印象がある。いろいろつまずくポイントが増えているので、それを一つ一つつぶしている。改善している途中という感じ」と説明した。
 「藤井王位は良い内容の将棋を続け、非常に充実されている印象。自分は竜王戦が終わった後、そこまで内容が改善している感じではないので、開幕までの1カ月でしっかり頑張って、内容を良くしたい」と意気込んだ豊島九段。7番勝負では、昨年からの「変化」が見られそうだ。

◆タイトル初挑戦逃すも意地は見せた

池永天志五段

 一方、敗れた池永五段も、羽生善治九段(51)や久保利明九段(46)、糸谷哲郎八段(33)ら強豪のひしめく白組で優勝した充実ぶりをうかがわせる戦いぶりを見せた。夕方には池永五段の師匠で、3月末に現役を引退したばかりの小林健二九段(65)が控室を来訪。「序盤は消極的かと思ったが、ギアを上げてきた」と、まな弟子の大一番を見守った。
 小林九段は四段だった1977年、王位戦の挑戦者決定戦に進出。対局前、師匠の故板谷進九段から「負けたら記録係だ」と鼓舞されたが、故米長邦雄永世棋聖に逆転負け。師匠の言いつけ通り、その7番勝負で記録係を務めたという逸話がある。今回、タイトル初挑戦を目指す池永五段にも、冗談で「負けたら記録係だ」と声をかけたという。
 藤井王位の師匠の杉本昌隆八段(53)は小林九段の弟弟子に当たり、今も交友が深い。藤井王位と池永五段の「板谷一門対決」を「亡き師匠に見せたい」と語りながら継ぎ盤で検討していたが、次第に豊島九段の優勢が明らかになり、「ダメか…」と肩を落とした。それでも池永五段は指し続け、最後は刀折れ、矢尽きたところで投了。小林九段は「執念で指していた。根性を見せた」と弟子の健闘をたたえていた。

◆7番勝負の日程と会場は?

(左から)豊島将之九段、藤井聡太王位

 藤井王位に豊島九段が挑む7番勝負は6月28、29日、愛知県犬山市の「ホテルインディゴ犬山有楽苑」で開幕し、全国を転戦する。日程と会場は以下の通り。
 第2局 7月13、14日 札幌市・定山渓温泉「ぬくもりの宿ふる川」
 第3局 7月20、21日 神戸市・有馬温泉「中の坊瑞苑」
 第4局 8月15、16日 佐賀県嬉野市・嬉野温泉「和多屋別荘」
 第5局 8月24、25日 徳島市「渭水苑」
 第6局 9月5、6日 静岡県牧之原市「平田寺」
 第7局 9月19、20日 神奈川県秦野市・鶴巻温泉「元湯陣屋」

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