ペットの心肺蘇生 正しい処置を飼い主に伝授 オンライン講座開始

2022年6月1日 08時24分

小型犬のぬいぐるみを使い、片手を背中、もう一方の手で心臓マッサージをする手法を説明する山本大樹さん=名古屋市内で

 もし散歩中にペットが意識をなくしたら−。病気や事故などで心臓や呼吸が止まった犬、猫を守るため、飼い主らに正しい救命法を伝えるプログラムを、民間の「ペットBLS(1次救命処置)トレーニングセンター」(東京)が開発した。獣医師らでつくる日本獣医救急集中治療学会の監修の下、今月から有料のオンライン講座を始めた。 (長田真由美)
 同センター代表の山本大樹さん(40)はもともと、青森県で主に救急救命士として消防本部に勤務。二〇一一年の東日本大震災で避難誘導をした時、港で津波を目の当たりにし、防災の大切さを痛感した。一六年に退職後、各自治体の防災計画策定などに関わり、防災研修などを手掛ける「地区防災研究所」を昨年四月に設立。ペットの防災にも力を入れ、同年十二月、研究所内に同センターを開いた。
 災害時、避難所でペットの具合が悪くなったらどうするか。「獣医師も被災すると、自分のペットは自分で守るしかない」と山本さん。科学的根拠に基づいた動物の救命法を探し、米国の獣医師団体が一二年にまとめたガイドラインを知った。人の救命救急のデータや、どんな処置をしたら救命率が上がるかという実験をベースに作られている。
 日本でこのガイドラインの普及に取り組んでいたのが同学会だった。獣医師だけでなく、一般の飼い主にも救命法を伝えようと、同学会理事長で札幌夜間動物病院院長の川瀬広大さん(40)と、山本さんが意気投合。山本さんは川瀬さんらから救命法を学び、ガイドラインに基づく講習のプログラムを作り上げた。
 なぜ飼い主による心肺蘇生法が大事なのか。川瀬さんは、人とペットとの医療体制の違いを挙げる。「人と違ってペットは救急車を呼び、すぐに病院に行けるわけではない」。心肺停止した時にすぐに蘇生処置を始められるかどうかで救命率が変わるため、「飼い主自体がペットの状態に気付いて処置できるかが重要になる」と話す。
 具体的には、飼い主はまず、手をたたいたり名前を呼んだりして犬や猫に反応があるか、呼吸をしているかを十五秒以内に判断。続いて心臓マッサージと人工呼吸を二分間繰り返す。人工呼吸は口ではなく鼻に息を吹き込む。心臓マッサージは体の大きさや胸の形でやり方が異なる。蘇生処置をしながら、動物病院や主治医に連絡することも不可欠。講座では、実際の感触を再現した犬や猫のぬいぐるみを使い、動画を見ながらこうした手法を学ぶ。
 川瀬さんによると、一般的に動物病院で急変し、心肺停止になった犬の蘇生率は5〜6%。一方、川瀬さんの病院でガイドラインに基づいて処置した場合、五〜六割が心拍や呼吸が戻り、一割弱が自宅に戻って普通の生活を始めたという。「高度な救命処置は医療機関でないと難しいが、そこにつながる前にできることがある」と川瀬さん。「ほとんどの人はいざというときに落ち着いていられない。日頃のトレーニングが大事になる」と強調する。
 講座は六歳以上が対象で、一人一万三千八百円(四人同時受講で二万六千四百円)。トレーニング器材が届き次第、好きな時間に受講可能。実技動画を同センターに送る試験を経て、「ペットBLS検定」の資格が取得できる。講座の詳細は同センターのホームページで。

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