防衛費倍増に必要な「5兆円」教育や医療に向ければ何ができる? 自民提言受け考えた

2022年6月3日 06時00分
 自民党は国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に防衛費の大幅増を政府に提言し、岸田文雄首相も「相当な増額」を表明した。2022年度の防衛費はGDP比1%程度の約5兆4000億円で、2%以上への増額には5兆円規模の予算が必要となる。自民党は、厳しさを増す安全保障環境の下、国民を守るために防衛費の増額が必要と説明するが、5兆円の予算を教育や年金、医療など暮らしのために振り向ければ、どのようなことができるのか、考えてみた。(村上一樹)
 「コロナで国民の生活は萎縮し、物価高で生活苦に沈む年金生活者やワーキングプアはあふれている」「防衛装備より環境問題や貧困・格差問題に充てるべきだ」。政府や自民党が防衛費の大幅増を打ち出して以降、本紙には読者から切実な訴えが寄せられている。
 一方、自民党の安倍晋三元首相は2日の派閥会合で、GDP比2%以上への防衛費増額を経済財政運営の指針「骨太の方針」に明記するよう求め、「国家意思を示すべきだ」と訴えた。

◆教育...児童手当の所得制限撤廃も大学、給食無償化も

 5兆円とはどんな規模で、何ができるか。教育施策に使う場合、立憲民主党の試算によると、大学授業料の無償化は年1兆8000億円で実現。家庭の経済事情で進学を断念せざるを得ない若者の支援につながる。
 さらに、児童手当の拡充にも充てられる。支給対象を現在の中学3年までから、高校3年までに延長した上で、親の所得制限を撤廃して一律で1人1万5000円を支払う場合、年1兆円で賄えると立民は試算する。
 小・中学校の給食無償化は、末松信介文部科学相の国会答弁によると、年間4386億円で実現する。大学無償化、児童手当の拡充、給食無償化の三つを組み合わせても3兆円台で収まる。

◆年金...全員に月1万円上乗せ

 食料品や電気・ガスなどの急激な値上がりに苦しむ年金生活者のために使うとすれば、4051万人の年金受給権者全員に対し、月1万円、年12万円を上乗せして支給することができる計算となる。
 物価高対策では、立民や国民民主党、共産党が消費税の減税を求めている。5兆円あれば、税率を10%から8%へと引き下げる2%分の財源になる。食料品などの負担が大きい低所得層ほど減税の効果は大きい。

◆医療...自己負担ほぼゼロに

 医療に使う場合はどうか。厚生労働省の資料によると、19年度の医療費のうち、国民の自己負担額は5兆1837億円。5兆円は、自己負担をほぼゼロにできる規模だ。
 共産の志位和夫委員長は5月の記者会見で、医療費の規模に触れ、「軍事費2倍というのは生易しい額ではない。仮に(5兆円の確保を)医療費負担にかぶせるとしたら、現役世代は3割負担が6割になる。国民の暮らしをつぶすという点でも反対だ」と批判した。

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