医療研修に仮想現実 救急現場の臨場感再現 創業者の元テレビ局社員「経験生きた」〈マイストーリー〉

2022年6月5日 06時00分

総合病院に救急搬送されてきた患者への応急処置を撮影したVR映像。ゴーグルを装着して顔を動かすと、映像も動いてその場にいるような臨場感が得られる=東京都内で(ジョリーグッド提供)

 救急車で搬送された重症患者に蘇生措置をする医師や看護師―。映画やドラマの緊迫した1場面のようだが、医療技術を向上させる研修を安全に行えるツールとしてVR(仮想現実)ソフト開発のジョリーグッド(中央区)が作成したVRだ。実際に現場で撮影した映像から再構成し、研修に活用されている。(小松田健一)
 創業者でCEO(最高経営責任者)の上路じょうじ健介さん(48)は、岩手県内のテレビ局で技術社員を10年間勤めた後、大手広告会社に転職。「ウェアラブル端末」など身に着ける端末機器の見本市を企画し、成功を収めた。その際、端末を活用するソフトが少ないことを知ったのが創業のきっかけ。テレビ局時代に映像にかかわった経験を生かしてVRビジネスに進出した。

VRゴーグルを手に医療や福祉分野のVRソフト開発について話すジョリーグッドの上路健介社長=東京都中央区で

 当初は物産展会場で、名産品の産地を疑似体験できる観光用VR映像などを製作していた。医療分野への進出は2017年で、カテーテル手術を執刀医視点で体験できる医師向け研修用ソフトを開発。撮影に著名な医師が協力したこともあり、上路さんは「一流ドクターの技術をいつでもどこでも見られると反響が大きかった」と振り返る。

◆研修機会少ない地域で特に有用

 VRを使った研修は安全で、いつでも何度でも繰り返せる利点がある。地方や離島など、都市部に比べて研修機会が少ない地域では特に有用という。コロナ禍で人と人との接触機会減少が求められたことも追い風となった。素材となる映像を撮影するため、医療機関にスタッフが出向いて「密着取材」することもある。利用者が映像に違和感を覚えないようにすることに苦心した。「実際の視点に近づけるのは難しかったが、テレビ局での経験が生きた」と明かす。

VR映像の撮影風景。医療機関の協力を得て現場で実施した=東京都内で(ジョリーグッド提供)

 社員は全員が中途採用で、医療関係業界からの転職が多い。医師や公認心理師ら国家資格保有者もいるという。坂田敬介さん(31)は今年4月、医療機器メーカーの営業担当から転職し、一般社団法人日本救急看護学会(中野区)が、交通事故など外傷救急の研修教材にVRを採用するプロジェクトに取り組んだ。「看護師の皆さんの技術向上に貢献したい」と意気込む。
 医療のほか、障害者教育や介護・介助などのソフト開発にも取り組む。上路さんの理念は「テクノロジーが無縁だったところへ届けたい」。全ての人が最新技術の恩恵を受けられるよう、進歩を続ける。

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