<書く人>観る将 めっちゃおもろい 『すごすぎる将棋の世界』 お笑い芸人・高橋茂雄さん(サバンナ)(46)

2022年6月5日 07時00分

渡辺明二冠の扇子を手にする高橋茂雄さん

 テレビのバラエティー番組に不可欠な存在としての地位を築き、子ども向け番組で声優を務めるなど多方面で活躍するお笑い芸人が初めて発表した本のテーマは「将棋」。ただし上達法やルールは一切書いていない。観戦を楽しむ「観(み)る将」になるためのガイドブックだ。
 もともと「将棋のルールは知っている」程度だった。藤井聡太五冠(19)=竜王・王位・叡王・王将・棋聖、愛知県瀬戸市=が初めてタイトルを獲得した二〇二〇年、インターネットで検索したのをきっかけに、のめり込んだ。「将棋って、めっちゃおもろいやん」
 自身の棋力は、今も初級者。だが、棋士たちの過去の真剣勝負の数々を熱く語る。渡辺明二冠(38)=名人・棋王=が〇勝三敗から四連勝で大逆転した二〇〇八年の竜王戦七番勝負、プロ棋士が人工知能(AI)と死闘を繰り広げた「電王戦」−。
 近年のインターネットやテレビの対局中継は、AIの評価値が画面上に表示され、形勢や最善手が一目で分かる。「盤面だけでは、まるで見知らぬ国の街頭の映像を見ているよう。でも棋士の解説や、聞き手とのやりとりが面白い」。プロ芸人の目で見ると話し下手と思う部分もあるが、だからこそ、棋士たちの人間性が伝わってくるという。
 これほど観戦を楽しめる環境ができているのに、将棋のことを話せる相手が少ないことに、歯がゆさも感じてきた。本書では、藤井五冠らの対局エピソードのほか、棋士が公式対局中に出前を取る飲食店や、過去にタイトル戦の会場となった「聖地」などを紹介。「手の意味が分からなくても、面白いことがいくらでもある」と呼び掛けている。
 渡辺二冠との対談も収録した。<対局中に読むのは十〜二十手><将棋以外の記憶力は普通の人と変わらない><AI研究が忙しくて土日も休めない>など、二冠のざっくばらんな話しぶりが楽しい。「包み隠さず話してくれる、魅力的な人だった」
 現在は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、将棋にまつわる動画も多数配信。プロ棋士との指導対局も重ねている。だが「うまくなりたいとは、全く思わない」。将棋を知らない人に面白さを伝えるには、今のままの棋力のほうがいいのだと断言する。ただ「(初段以上の棋力で与えられる)免状だけは欲しいんですよね」。マイナビ出版・一六九四円。 (大山弘)

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