日本の「人力車」補助棒、ウクライナの車いす避難民をサポート 長野の福祉用具会社が支援

2022年6月6日 11時36分
 ロシアのウクライナ侵攻で生活を破壊され、避難や移動に困難を抱える高齢者や障がい者を支援しようと、長野県箕輪町の福祉用具会社経営、中村正善さん(64)が、自身が開発した車いすの補助器具を送る活動を始めた。一行は今月、第1弾としてウクライナ避難民が多いポーランドを訪問、現地で切実な需要を目の当たりにした。「日本の技術で多くの命を守りたい」と、支援の拡大を目指す。(ロンドン・加藤美喜)
 「帰国は諦めていたが、これで戦争が終われば帰れる」。ウクライナ国境に近いルブリン郊外の福祉施設。中村さんの提供した補助棒「JINRIKI QUICK(ジンリキクイック)」を取り付けると、左脚の不自由な夫が、軽い力で妻の車いすを引いて動かすことができた。キーウ(キエフ)から避難してきた若い障がい者夫婦は、涙を流して喜んだ。
 この補助棒は、車いすの前方に取り付けて前輪を浮かせ、人力車のように引く仕組み。簡単に着脱でき、悪路や段差も乗り越えることができる。東日本大震災を機に開発し、特許を取得した。

6月2日、ワルシャワ郊外の特別支援学校で、JINRIKIを体験して喜ぶウクライナ避難民の障害児ら=花岡凌氏(m to Edit productions)提供

 ロシアの攻撃で高齢者や障がい者らが避難を余儀なくされている状況に、中村さんは居ても立ってもいられず「今動かなければ」と決断した。クラウドファンディングや名古屋市の名鉄百貨店での募金で約4000万円を集め、まず100セットを寄贈することに決めた。
 5月下旬に知人らと3人で日本をたち、現地で国際ジャーナリストの木村正人さん夫妻と合流。1週間かけて各地の避難民施設や支援団体を回った。

6月1日、ポーランド・ルブリン近郊の福祉施設で、JINRIKIを使って車いすで階段を下りるウクライナ避難民の女性=花岡凌氏(m to Edit productions)提供

 ワルシャワ郊外の特別支援学校では、避難民の少年らがJINRIKIを体験し、行動範囲が広がって笑顔がはじけた。ワルシャワ拠点の支援団体「フューチャー・フォー・ウクライナ(FFU)」副代表のオレナ・ソトニクさんは「東部では今も砲撃が続き、多くの高齢者が連日、防空壕(ごう)への避難を余儀なくされている。数千台規模のJINRIKIが欲しい」と要望する。
 JINRIKIを体験した宮島昭夫駐ポーランド大使は「戦争が長引き、ウクライナの人々だけでなく、支援するポーランドの人々にも疲れが出ている。日本の発想と知恵によって、負担軽減の手助けができると感じた」と意義を語る。
 中村さんは「今回の訪問で多くの需要と緊急性の高さを感じた。他国は武器を支援しているが、日本の技術で、日本にしかできない支援をしたい」と話す。8〜9月に第2弾として500セットを用意し、ウクライナ入りも視野に再渡航する予定だが、製作費や関税、輸送面などで課題も多いという。「車いす自体も不足しており、もっと大きなプロジェクトにしたい。政府の協力も得て、大勢の仲間を募って活動の輪を広げたい」と願っている。

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