福島原発事故、東電強制起訴の控訴審が結審 旧経営陣側は無罪主張

2022年6月6日 21時45分
 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった東電の旧経営陣3人の控訴審が6日、東京高裁(細田啓介裁判長)で結審した。判決期日は追って指定されるが、被害者参加代理人によると12月〜来年1月の可能性があるという。

東京高裁に入る武黒一郎元副社長㊧ら(代表撮影)

 国が2002年に出した地震予測「長期評価」に基づき、原発への津波襲来を予測できたかなどが公判の争点。検察官役の指定弁護士はこの日の最終弁論で、長期評価の信頼性を否定して3人に津波の予見可能性はなかったとした一審東京地裁判決を「事実誤認」と主張。「被告らは何らの津波対策を講じず、安全を確保する義務を怠った」と批判した。一方、3人の弁護側は「一審判決に誤りはない」としてあらためて無罪を主張した。
 この日の公判には、旧経営陣3人のうち、勝俣恒久元会長(82)と武藤栄元副社長(71)は法廷に姿を見せず、出廷したのは武黒たけくろ一郎元副社長(76)のみだった。
 今月17日には、福島から避難した住民らが国に損害賠償を求めた訴訟の最高裁判決があり、長期評価の信頼性についても判断が示されるとみられる。被害者側は今回の公判で、「最高裁の判断が出るまで審理を継続すべきだ」とする上申書を提出していた。

◆一審37回 → 控訴審は3回で結審 被害者側「現場も見ずに悔しい」

閉廷後に会見をする被害者参加代理人の海渡雄一弁護士㊨ら=東京・霞が関の司法クラブで

 「現場も見ずに結審されるのは悔しい」。この日の公判では、被害者遺族の意見陳述書が指定弁護士によって代読された。
 一審の審理が37回に及んだのに対し、昨年11月に始まった控訴審は計3回の審理で終結となった。指定弁護士は事故の現地調査の実施や新たな証人尋問を求めたが、裁判所に認められなかった。
 被害者側は、最高裁が今月17日の原発避難者訴訟の判決で、長期評価を巡って判断を示すことに望みを託す。この日の公判で指定弁護士は「一審判決は長期評価の信頼性がないことを前提としており、信頼性が認められれば一審判決の正当性は根底から覆る」と主張。一方、3人の弁護側は、民事訴訟に比べて刑事裁判は立証のハードルが高いことを強調した。
 被害者参加代理人の海渡雄一弁護士は、閉廷後の記者会見で「弁護側は最高裁で長期評価の信頼性を認める判断が出た場合に備え、『刑事と民事は違う』という主張をしたのだろう。だが、最高裁判決次第で、高裁は判決までにもう一度弁論をする可能性もあり、われわれは望みを捨てることはない」と述べた。(小沢慧一)

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