侮辱罪の厳罰化に賛否 「批判の自由」損なわれる懸念も 参院で参考人質疑

2022年6月7日 21時16分

参院法務委に参考人として出席した(奥左から)龍谷大の石塚伸一教授、専修大の山田健太教授、法政大の今井猛嘉教授


 インターネット上の誹謗ひぼう中傷対策として侮辱罪を厳罰化する刑法改正案を巡り、参院法務委員会は7日、参考人質疑を行った。専修大の山田健太教授は、厳罰化が表現の自由の制約につながり、権力に対する「批判の自由」が損なわれるとして「問題は実際に捕まるかどうか以上に萎縮が生まれることだ」と指摘した。
 山田氏は「刑事罰を重くすれば犯罪の抑止につながるが、そのために民主主義が壊れることはあってはならない」と主張。侮辱罪の適用対象の多くは、やじやデモなどの「大衆表現」だとして、「恣意しい的に刑事罰の対象として取り締まられることは、表現規制の典型例だ」と懸念を示した。
 政府は、侮辱罪での現行犯逮捕について「法律上は可能だが実際上は想定されない」とする統一見解を示している。山田氏は「逮捕をほのめかすことで表現を止めることが起きる可能性を考慮する必要がある」と強調。誹謗中傷対策は、刑事罰の厳罰化以外の方法を強化すべきだとした。
 一方、法政大大学院の今井猛嘉たけよし教授は「名誉毀損きそん罪と比較しても法定刑引き上げは正当」と評価。政府の統一見解を捜査機関などに周知することを求める衆院法務委員会の付帯決議により「乱用的な現行犯逮捕はなくなるのでは」との見方を示した。
 龍谷大の石塚伸一教授は、厳罰化を行えば告訴や告発が増えるとして「捜査機関の対応能力が追いつかずに選別的な適用がされると、法に対する信頼を損なう」と問題点を指摘した。
 改正案は「拘留または科料」となっている侮辱罪の法定刑に「1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金」を加える内容。法定刑に「懲役・禁錮」が入り厳罰化されることで、刑事訴訟法の規定によって逮捕要件が緩和される。(井上峻輔)

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