愛する「ニシオギ」の将来像は住民自ら描く 西荻窪で行政主導の道路拡幅計画に反対

2022年6月10日 12時00分
 「アンティークの街」として知られ、ユニークな商店が軒を連ねる東京都杉並区の西荻窪で、住民らが自分たちの手で未来のまちの設計図を描こうと活動している。きっかけは3年前、区が半世紀も前の道路拡幅計画に着手したこと。反対するだけでなく「ニシオギらしい」代替案を示すのが目標だ。杉並区長選(12日告示、19日投票)を前に、住民参加のまちづくりのあり方を問い掛けている。(砂上麻子)

西荻窪の道路を調査する参加者=東京都杉並区で

 「小さい店が集まっているのは西荻らしいよね」「でも道が狭い。火事の時は心配かな」。今月5日、JR中央線西荻窪駅の周辺を歩き、その魅力や問題点を考える「ニシオギ大調査」のイベントがあった。区内外から10人が参加。主に大衆的な飲食店が密集する駅南口1キロを歩いた。
 企画した市民グループ「西荻のこと研究所」メンバーで、「西荻のまち歩きマップ」を発行する奥秋圭さん(48)は「道路拡幅計画がまちを大きく変えようとしているといわれるけれど、じゃあ西荻らしいまちって何なのか。みんなで考えてもらいたいと思った」と話した。
 拡幅計画がある道路は、駅北側の商店街「北銀座通り」を走る「都市計画道路補助132号線」だ。拡幅は1947年に計画され、長年たなざらしになっていたが、2000年代に都が優先整備道路に選定。区は「防災の向上」を理由に20年1月から事業化を進める。拡幅に伴う駅南口の開発話も浮上した。
 19年に計画を知った奥秋さんは「まちはどうなるのか」と不安を感じた。「ニシオギを愛する人たち」の声を反映させられないか。地元在住の建築家や都市計画の専門家らに声を掛け、プロジェクト「ニシオギ空想計画」を開始。「未来の西荻」のアイデア募集に1カ月で35点の応募があった。強力な消火設備と屋根で守られた路地の飲み屋街、あちこちにベンチや椅子を置いた「すわれタウン」…。4歳の子からは「にしおぎねこタワー」建設の提案もあった。

西荻窪の道路拡幅計画について語る奥秋圭さん=東京都杉並区で

 20年1月にこれらを「ニシオギ空想新聞」としてまとめたところ、約1000部を売り、話題となった。
 同4月には、商店街の一角を事務所に「西荻のこと研究所」を設立。勉強会や街づくり計画の提案に取り組む。一律に拡幅せず、歩行者が多い地域は歩道の幅を広げるなど、エリアごとに変えられないか。住民と区が計画案を話し合うフォーラムの設置はどうか—。だが、何度説明しても、区の担当者は「道路舗装の色と街路樹は、住民に選んでもらっていい」などと言うだけで素っ気ない。
 奥秋さんは区長選に注目する。「(候補者は)道路だけでなく、どんなまちにしたいのか住民の意見をもっと聞いてほしい。反対している人にも寄り添う区政であってほしい」

道路拡幅計画が進むJR西荻窪駅前の区道

 西荻窪 JR中央線西荻窪駅は、阿佐ケ谷、高円寺とともに土日祝日になると快速電車が通過する「杉並3駅」の一つ。各種調査で「住みたい街ナンバーワン」常連の吉祥寺駅(武蔵野市)、近衛文麿や井伏鱒二、棟方志功らが暮らした高級住宅街を抱える荻窪駅(杉並区)のはざまで目立った開発がなく、昭和レトロな街並みが残された。1970年代から米国発のヒッピー文化に影響を受けたアーティストたちが営む雑貨店やギャラリーが増え、現在は東京を代表するアンティークショップの集積地。女性に人気のショップが多い駅南口から延びる通りは「乙女ロード」の愛称がある。

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