経済成長停滞する中国に空前の就職氷河期到来 新卒1000万人、ゼロコロナで激戦

2022年6月11日 06時00分
 中国に就職氷河期が到来した。経済を犠牲にして感染を抑える「ゼロコロナ」政策で失業者が増える一方、大学新卒者は1000万人を超え、史上最多に。人気のIT企業は、習近平しゅうきんぺい指導部による規制強化の影響でリストラ続きだ。成長が止まりつつある時代に安定を求める学生たちは、厳しい就職戦線をさまよい歩き、疲れ果てている。(北京・白山泉、写真も)

◆最も人気が高いのは「TikTok」だが…

2日、新型コロナ対策を理由に出入りを原則禁じ、人気のない北京市内の大学=白山泉撮影

 中国の大学の卒業式は6月末。就職活動は1年前の夏にスタートし、秋と翌春の大規模な採用会が開かれて内定が出る。新入社員として働き始めるのは、卒業翌月の7月からが一般的。長期のインターンシップ(就業体験)も盛んで、そのまま入社する人も多い。
 学生の就職先で最も人気が高いのは、動画投稿アプリ「TikTok」を運営する「字節跳動(バイトダンス)」(北京市)。6000人の新卒生を採用する計画で、初任給は職種によって約20万〜60万円。本社内にジムがあり、一流の料理人がメニューを手掛ける社内食堂は、北京の企業で最もおいしいと評判だ。
 北京市の大学4年生の男性(26)は昨秋、同社のインターンシップに参加したが、採用試験は受けなかった。「通勤に往復3時間。残業や休日出勤が多くて疲れた」と言う。
 今はスマホを使って求人を探しオンライン面接を繰り返す。20万円以上としてきた月収の目安も半分の10万円に引き下げた。条件に合う営業職の求人を見つけやすくはなったが「リストラのリスクがある仕事は嫌だ」と選べずにいる。

◆IT大手などで人員削減、学生はリストラに不安

 習指導部は昨年、格差拡大への懸念などからITや教育、不動産業の企業活動に対する規制を強化した。その結果、IT大手などで大規模な人員削減が相次ぎ、学生はリストラへの不安を抱えるようになった。

「ゼロコロナ」で外出できない学生のためスマホアプリで行われているオンライン就職説明会=白山泉撮影

 同時にゼロコロナによる景気悪化も就職難に拍車を掛けている。都市部に住む若者の失業率(今年4月、16〜24歳)は2018年の調査開始以来、最高の18.2%に達した。中国の就職市場の調査でも、今年4月中旬の時点で1社以上から内定を獲得した学生は47%にとどまり、前年の63%から大幅に減少した。
 大学生の就職難は大学院入試の難化という副産物も生んだ。昨年、北京市の有名大を卒業した楊さん(23)は大学院受験の浪人中。「中国では修士を取得した方が良い企業に就職できる」と昨年、大学院を受験したが失敗した。就職難から進学を選ぶ学生が大学院に殺到しており、今年も希望する大学院に入ることができず、今後の進路に悩んでいる。

◆企業と学生のミスマッチ加速、公務員倍率400倍

 政府の危機感は強く、全国の大学学長に対し、自ら職探しのために企業を訪問するよう指示するほどだ。企業と学生のミスマッチが加速する中、公務員を目指す学生も増加。競争倍率が400倍に上った公務員試験もあった。このため中国紙によると、公務員志望の女子学生は「競争が激しすぎるため諦めた」。希望する仕事は見つからないが、卒業が近づくにつれて焦りが消え、何も求めることがない達観の境地に近づいているという。
 こうした心理状態は「仏系(フォーシー)」と呼ばれ、流行語になっている。成長が鈍化する中国で、多くの若者が激しい競争社会からの「解脱」を求めていることを象徴する。

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