「表現の敵」を造形 トリエンナーレ作家・中垣さん新作、立川で展示

2019年12月30日 02時00分

作品への思いを語る中垣克久さん=27日、東京都立川市で

 テロ予告や脅迫が相次ぎ一時中止に追い込まれた「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」。企画展を巡る一連の問題点をテーマにした東京都在住の造形作家中垣克久さん(75)の新作が、話題を呼んでいる。枯れ木を使って恐竜のような生き物を表現した「時代(とき)の肖像-愛知の絶滅危惧(きぐ)種」。表現の自由を封じる政治や社会状況に危機感を強め、風刺を込めた。
 作品は全長約三メートル。枯れ木の幹と枝を組み合わせ、生き物の胴体と前足、後ろ足を表現。絵の具で色付けした。トカゲのようにも見える。トリエンナーレ終了後の今秋、制作した。
 「企画展の中止は、右傾化・軍国化していく日本を象徴する出来事だった」と中垣さんは振り返る。「明治以降の帝国主義の時代に戻ろうとしているようだ。もろに危機感を覚えた」
 企画展は政治家の言動で“炎上”した。河村たかし名古屋市長はトリエンナーレ開幕翌日の八月二日、慰安婦を象徴する少女像を「日本国民の心を踏みにじる」とし、撤去を要求。十二月に最終報告をまとめた愛知県の検討委員会は、市長の言動を「個別作品への検閲」とし、これにより抗議電話の攻撃「電凸(でんとつ)」が激化した可能性を指摘した。
 県は八月四日から企画展を中止。中垣さんの造形も展示中だったが、鑑賞できなくなった。中垣さんは「慰安婦(の過酷な状況)について『証拠はない』と言う人がいるが、桜を見る会の問題と同じで証拠はある。国家主義的、閉鎖的で、歴史を学ばない醜さを感じる」と指摘する。この思いが新作を生んだという。
 新作の展示は来年一月五日まで、東京都立川市の国営昭和記念公園・花みどり文化センターで開催中の「花とみどり・いのちと心展」(東京新聞後援)で。無料。十二月三十一日と一月一日は休み。 (宇佐見昭彦)

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