車いす整備、心込め1万台 高齢ボランティア「1台1時間」

2019年12月29日 02時00分

車いすを整備する櫛野浩一さん(手前)らボランティアの会のメンバー=東京都江東区で

 高齢者施設などで使われる車いすを手入れする「車椅子点検整備ボランティアの会」(東京都江東区)の整備台数が、活動14年目で1万台を超えた。整備を手掛けるのも60~80歳代の高齢者たち。「活動を喜んでもらいながら1万台の節目を迎えて、うれしい」と元気だ。 (梅野光春)
 「要整備」と書いた札が付いた車いすがずらりと並ぶ。タイヤのチューブに空気を入れるコンプレッサーが「ブルブルブル」と動く音や、「ザッ、ザッ」と座面を掃除する音が響く。江東区社会福祉協議会(区社協)の一室は、まるで町工場に変わったかのようだ。
 「タイヤのチューブの空気漏れを防ぐ虫ゴムは必ず交換する。他にもボルトを締め直したり、掃除したり、一台に一時間くらいかけるね。その後、整備した人とは別の人がチェックする。ボランティアでも活動に責任を持たなきゃ」
 会の代表の櫛野浩一さん(79)の語り口は明快だ。電子部品や自動車部品のメーカーに勤務し、海外工場の管理部門も担当した。車いす整備の工程には、そのころ培った管理の手法を生かしている。
 活動は二〇〇六年、櫛野さんら区内の高齢男性六人でスタート。区社協が無料で貸し出す車いす五百台のメンテナンスの人手がない、と耳にしたことがきっかけだった。大田区の工業高校に足を運んで整備の基礎を学び、活動一年目は二百十三台を手掛けた。
 二年目に入ると、区内の高齢者施設で訪問整備を始めた。「車いすの整備って、盲点なんですよ」。櫛野さんが当時を振り返る。「手間がかかるのに施設では専門にやる人がいないから、やむを得ず職員が空き時間にやっている。そこで訪問を始めたら、喜んでもらえた」
 活動が知られるようになり、他の施設からも依頼が来るようになった。それとともに「手伝いたい」と会に加わるメンバーも増えた。一八年度は年間で最多の千三十九台を整備。ことし十月、通算の整備台数が一万台に達した。
 現在は八施設で年六十日ほど活動する。会員二十一人の平均年齢は七十五歳。メンバーの伊藤清さん(73)は「サラリーマン時代は事務系で、役に立てるか不安だったが十年以上続けている。施設を利用する人に『ありがとう』と言われると、やって良かったと感じる」と充実した表情で語る。
 「最近は定年延長で給料を稼ぐ人もいるから、ボランティアの担い手を確保できるかが今後の課題だね」と櫛野さん。「もし同じ活動をしたいグループがあれば、ノウハウを教えます」。実績に支えられた自信がのぞいた。

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