外来種・コブハクチョウの食害広がる 手賀沼周辺の水田、被害1.5倍に 保護求める声もあり対応に苦慮

2022年6月13日 12時00分

手賀沼近くの水田で苗を食べるコブハクチョウ=千葉県我孫子市で

 千葉県北西部の柏、我孫子両市などにまたがる手賀沼周辺で、外来種のコブハクチョウに水田の苗を食べられる被害が広がっている。一方で白鳥の保護を求める愛鳥家もおり、自治体の農政担当者らは「白鳥を野生化させた責任は人間にあるが、農家の被害も深刻で非常にデリケートな問題だ」と対応に苦慮している。(阿部博行)

 コブハクチョウ 全長が約150センチでオレンジ色のくちばしに黒いコブのような突起がある。鳴き声はほぼ出さない。ヨーロッパや中央アジアなどに広く分布。雑食性でマコモなどの植物や昆虫を食べる。4~5月が繁殖期。寿命は飼育下だと30年を超えるものもいるとされる。両翼を膨らませた姿が美しく、国内では観賞用に公園の池などに放鳥された。飼育下のものが逃げ出し、湖沼などにすみ着いて野生化したとみられる。童話「みにくいアヒルの子」の作者アンデルセンの母国デンマークでは国鳥とされている。

◆被害額は6市で1245万円

 よく晴れた5月末の土曜日、手賀沼の遊歩道に近い水田で2羽の白鳥が苗を食べていた。人を恐れず、近づいても動じる様子はない。近所の男性の話では例年なら5、6羽のヒナを連れた白鳥を田んぼで見かけるが、今年は親子連れを目にしていないという。
 県によると、2020年度の農業被害は我孫子市の560アール、柏市の486アールなど6市で計1078アールで、被害総額は1245万円に上り、面積、被害額とも前年度の1.5倍に増えた。県は6市を含む8市町と連絡調整会議を設け、追い払い方法や繁殖抑制対策、餌やり禁止の啓発活動などを話し合っている。

◆繁殖抑制に抗議も「白鳥が憎いわけではない」

 柏市では田植えを終えたばかりの水田を農政課の職員が毎日パトロールし、白鳥を見かけると、あぜ道の両側からロープを渡して追い出している。
 我孫子市では、手賀沼のそばの水田に防鳥ネットを張っているほか、一昨年から県の指導で一部の巣の卵を擬卵に交換して繁殖を抑制する対策に取り組む。愛鳥家から「命を粗末にするな」と抗議を受けることもあるが、農政課職員は「白鳥が憎いわけではなく、農家の被害を減らすため致し方なくやっている」と理解を求める。

◆「身勝手な人間の責任」

 我孫子市鳥の博物館によると、手賀沼のコブハクチョウが初めて記録されたのは1973年。飼われていたものが野生化したと考えられ、90年には繁殖が確認された。手賀沼から5キロほど離れた印西市発作の川には愛鳥家や市民による給餌場があり、昨年は100羽を超える群れが観察された。
 県から県内全域の生息調査を委託されたNPO法人バードリサーチの神山和夫研究員によると、昨年まで3年間は、161羽から177羽で推移した。今年は5月末時点で数十羽も減っており、県外へ移動した可能性が考えられる。
 生息数が増えた一因として餌やりの問題が指摘されているが、繁殖を十分に抑制できない現状のままで全面的に給餌を禁止することは、むしろ逆効果で「農地への侵入や他県への分散を促しかねない」と懸念する識者もいる。
 印西市で活動している愛鳥家グループは農業被害の防止に協力し、給餌の段階的な削減にも理解があるという。神山研究員は「関係者全員が問題点と対策の効果を確認しながら対処するべきで、これを機に身勝手な人間の責任ということを重く考える必要がある」と話している。

コブハクチョウが生息する手賀沼=千葉県柏市で

 手賀沼 千葉県北西部(東京から約20キロ)の湖沼。昭和の干拓事業で手賀沼と下手賀沼に分かれる形に。両方の沼とその間の河川を含む面積は6.5平方キロ、周囲38キロ、最深部3.8メートル。農業用水に利用され、内水面漁業も行われている。釣りやボート遊び、サイクリングなどのレジャーにも利用されている。近年は家庭雑排水の流入で水質が悪化し、浄化対策が進められる。一帯は県立印旛手賀自然公園に指定されている。

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